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亮ちゃんに、ひと言“帰るね”とメールをして病院を出た
「Aちゃん、待って！」
バタバタと走る足音。気にせず少し早足で歩き続けると
「ちょっ、待ってって！」
肩を掴まれて クルッと振り返った私
「大丈夫なん？」
「ん？何が？」
「えーっと、ルナのこと…」
「大丈夫だよ？“元カノ”さんでしょ？章大から聞いて、全部知ってる」
「そっか……にしても、大倉っ！よりによって何であんな奴 連れてくんねん！」
「きっと、彼女が勝手について来たんだよ。大倉くん責めるのは可哀想だよ、亮ちゃん」
「せやけどっ…」
「もぉ。本当に大丈夫だって！私、そろそろ仕事行かなきゃ。じゃあね」
「おっ、おん。また…」
ごめんね、亮ちゃん。心配してくれてるのに素っ気ない態度とって。でもね……
これ以上、ルナさんの話していたら さっきの事を思い出して 泣いてしまいそうなんだ
「え〜っと。服 よし！靴 よし！リュック よし！キャップ よし！」
少し大きめの鞄の中身を確認
章大の物が何ひとつ無くなった部屋を見渡し
「大丈夫！行こうっ」
荷物を持って 家を出た
病院で色々な検査を受けたけど、やっぱり異常は見つからなくて
倒れて1週間たった今日、章大は退院する
私の事を友達だと思ってる章大に、同棲してるなんてとても言えないから、亮ちゃんにルームシェアしてるって事にしてもらって、章大の荷物を全て運び出した
でも、この章大お気に入りの服たちは、退院の時用にと手元に置いておいた
いつもよりも病院に早く着いて、病室の前で深呼吸
章大 この服みたらどんな反応するのかな？
喜んでくれるかな？なんて期待しながら病室のドアをノックする
「はぁ〜い」
いつもよりも少し明るい声が聞こえて、ドアを開けると
「山田さん、おはよっ」
「おはよ…ぅ」
まだ退院までに時間があるのに、病院着でない章大
「やっぱ…おかしいよな？自分でも似合うてないと思うんやけど」
まるでファッション誌に載ってるような服を着ていて
「やっ、そんな事ない……カッコいい…よ？」
「ほんまに？よかったぁ〜。昨日ルナが持ってきてくれたんよ」
「そう なんだ…」
そういえば、ルナさんモデルやってるって聞いたっけ
持ってきた洋服の入った鞄を後ろ手にして、章大に見えないようにしながら
「本当に、似合ってるよ？」
鏡の前で何度も自分の姿を見直す章大に声をかけた
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作者名：ちか
| 作成日時：2015年8月28日 18時
