記憶のオクに…【青】 (ページ14)

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「はぁ～い、どーぞっ」

章大の返事でドアを少し開けてひょこっと顔を出したのは

「大倉っ、お前来たん？」

「おん。亮ちゃんから連絡もらってすぐ来たかったんやけど、仕事立て込んでて…」

章大のもう一人の幼なじみの大倉くん

大倉くんの話を遮って勢いよく開け放たれたドア

「章大っ！大丈夫なん？」

カツカツとヒールの音をさせながら、流行りの服に派手なメイク。少し離れていてもわかるキツめの香水

病院に似つかわしくないその女性は、章大の手を取って

「よかったなぁ。倒れたって聞いてめっちゃ心配したんよぉ？」

女子特有の甘ったるい喋り方で章大にすり寄った

「ルナアカンって！」

そんな2人の間に割って入った大倉くん

「ヤス？俺、大倉……大倉忠義。
わからへん……かな？」

切なそうに笑う大倉くんに

「ごめんな…でも、亮の事もすぐに思い出せたから、きっと思い出せると思うねん」

謝りながら大倉くんの目をジッと見据える章大

「俺な？ヤスの家の斜め向かいに4歳の時に引っ越してきてん…」

亮ちゃんとは違って、章大の顔色を伺いながらポツリポツリと話していく大倉くん

「家が近所やったから、ヤスと亮ちゃんとはすぐに仲良くなったけど、小学校で2人とクラス別れてもぉて。ほしたら俺、イジメられるようになって…

その日も、ひとりで自分の席に座っとったら、いきなりヤスが教室入ってきて

“お前がおーくらんことイジメとるんかっ！”

って自分よりもデカいクラスのリーダー格の奴に詰め寄って…

ヤス、そいつにボッコボコにされたんやけど、その騒ぎのおかげで、俺がイジメられとる事に先生が気付いてくれたんよ。

自分ケガしとるのに“おーくらよかったなぁ”って、笑ってくれて……

ヤスはな？俺の恩人やねんで？」

目を真っ赤にして話している大倉くんを、章大が抱きしめながら

「あん時は、身体が勝手に動いとってん。
大倉のこと、助けなあかんって。

ごめんな、忘れてもぉてて

大倉は、僕の大事な“親友”やで？」

2人でポロリと涙を流しながら、へへッと笑いあう

そんなフワリとした空気を壊すように

「なぁ？章大？あたしの事は思い出されへんの？」

その声を聞いて、黙って俯く章大

そんな章大の苦しそうな表情に気付いていないのか、“ルナ”さんは、話し続けた

「なんで？なんで思い出してくれへんの？

あたしは

章大の

彼女なんに…」