゙ ページ42
すいれんはふうりと連なって足早にそこを去った。私もついていく。振り向かずに歩いたから、彼女たちがどんな顔をしていたのかは知らない。どんなことを話していたのかも知らない。もっとも、そんなのは気にするところではなかった。
「すいれん、あれどういうこと?」
「どういうことって?」
「包帯巻くだけじゃ、怪我は治らないよ?ふうりも止めないし…。あれももしかして、「能力」の一環なの?」
「んー、そうだよ」
顔をこちらに向けないで、一言答えた。私にも教えて、団員なんだよと迫ると、まあまあとなだめられた。
「あれはきっとね、包帯巻いてる最中に魔法をかけていたのです!わたしの手から、なんかすごいパワーみたいなのが出てるんだと思う」
「思うって…自分でわからないの?」
「うん、まったく」
能力ってそういうものだよと諭される。彼女たちの中で能力というものは、得体のしれない曖昧なものらしい。それでも、ああすると何故か治るんだとか。
もっと使いこなせたら便利なんだけどねとひとりごちるすいれんに対し、それよりお前は包帯の巻き方を覚えろと辛辣なことを言うふうり。私もそう思った。
それより、少し不思議だ。
「ねえ、そんなわかれないモノを使って怖くないの?」
また、きょとんとした顔をした。ふうりも同様、突拍子もない質問に顔だけこちらに向けて首をかしげる。
「え?なんで」
「二人はもう慣れきってるのかもしれないけど、私は…。いきなりあなたは能力を使えますなんて言われても、どうしたらいいか分からないよ」
言いたいことはそのまま伝えた。色を操るなんて、普通空想上のものだ。空想が突然目の前に現れたら、普通はどうすればいいかわからないはずだ。
「まあね。でも、副作用に気をつければ特に人体に悪いことがあるわけじゃないし。限度を守って使えばいいよ」
「そう!さしずめお薬」
そう言って笑うすいれんにつられて、笑みが零れる。
「じゃあ、すいれんは傷薬だね」
「そうなんです!歩く保健室なんです!」
誇らしげにあんまりない胸を張るすいれん。それと、とふうりがつけ足す。
「灯色、『普通』って使いすぎ。普通なんて能力者でない人の基準でもバラバラなんだから、あまり使わない方がいい」
「え?あ、ああ…分かった」
「うん。それにさ」
普通なんて、私達の能力以上に曖昧なことだよ
そう言って顔を背けて歩き出したふうりがどんな表情をしていたのかも、私は知らない。
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ひすい(プロフ) - tubinさん» わわ、嬉しいお言葉がたくさん!ありがとうございます。雪氏の挿絵も相まってキャラの可愛さが伝わっていれば幸いです…。モチベがあがるー!早めに更新できるように努力します(`∀´*)/ (2021年8月28日 0時) (レス) id: bcd955ca5c (このIDを非表示/違反報告)
tubin - ひすいさん» すごくおもしろかったです!! 無中になって読んでました!! 続きがすごく楽しみです!! 応援してます!! これからもがんばってください!! (2021年8月27日 10時) (レス) id: 73a03e30c5 (このIDを非表示/違反報告)
颯貴(プロフ) - 秘封活動録………秘封活動倶楽部を思い出した……wwそれはさておき面白かったです! (2021年1月27日 14時) (レス) id: 877859fa3c (このIDを非表示/違反報告)
ひすい(プロフ) - 梨李愛さん» な、何かが違う…。でもありがとうございます、梅酒呑みます未成年ですけど!!! (2020年11月24日 18時) (レス) id: 13e26514b2 (このIDを非表示/違反報告)
75。(プロフ) - 梨李愛さん» 梨李愛さんだ!(歓喜)推しの敵の弱点を頂きましたありがとうございます^^ ?「75と仲間になる確率が上がった!」 (2020年11月24日 17時) (レス) id: 262b134c7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひすい&雪。 x他1人 | 作成日時:2020年10月26日 21時