BEAUTIFUL KILLER

hero ページ21

誰にも知られないように

この感情は隠す。

まだ知られるには、早い。






デビューして二日。

可愛らしい曲。可愛い服。

キラキラと眩しいそれらは、まるで夢の世界。

眠っても見ることの出来ない、僕の夢。







僕がキミのヒーローと歌う。

僕は本当に君達のヒーロー?






本当の僕を知ったら、君達は絶対後悔するだろう。

だから、まだ言わないよ。

それまでは、偽りの僕を楽しんで。

これは、楽しいショータイムだ。

君も... 仲間だ。









共演する他のアイドル達も

誰も僕の何も知らないまま、僕を格好良いと言う。

皆、僕の何を見てる?

でも僕は、皆が求めるLOYを演じ続ける。

それが僕の仕事。終末への準備。








今日も仕事が終わった。

昨日よりかは多少、上手く出来たような気がする。

TV局を出ると、出待ちの沢山のファン。

僕の名前のプラカードを持った子がいた。

僕は車に乗り込む前に

その子に向かって手でハートを作り





"愛.し.て.る"





と、口を動かした。

車に乗り込んで、窓を開けたら

ちょうどさっきの子が、泣いてるのが見えた。








可哀想に、君は何にも知らないから。

僕の全て、君は何も知らないでしょ?







僕が終わるのが先? それとも秘密を暴かれるのが先?

何れにせよ、僕の結末に変わりはない。







揺られながら走る車中。僕は考えた。

この仲間達は本当の僕を知っても

変わらず僕の傍にいてくれるだろうかと。








でも多分、僕が耐えられない。

もう少し距離をおけば

僕の傷が抉られることもなく済む筈なのに。

僕はバカだから、自分から行く。

例え、血塗れになっても。

僕の帰る場所は、もう此処しかないんだ。







宿舎に着いた。

此処に居ると、僕も普通の人間になれたような気がする。

だけどそんなのは、僕の幻想。分かってる。






シャワーを浴びる度、思い知らされる。

僕が普通じゃないという証明。






どうして、消えないんだ。

毎日こんなに洗ってるじゃないか。

なのにどうして... この手にびったりとついた血は

洗い流してもまだ此処に残る?







服で隠す、僕の秘密。

白く曇った鏡に書いた、字を消した。

鏡に映る僕は誰だ? ...僕だ。








リビングには、もう誰もいない。

また、僕達の今日が終わる。

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