恋を拾う。 (ページ4)

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おかんが大好きだった。
偉い人とかの前ではお母様、と呼ばなきゃいけなかったけれど、本当は嫌なの、と笑う優しい人で。
２人きりの時だけ、内緒でおかんって呼んでた。

９歳の時、おかんが急に病気で亡くなった。
けれど、父さんはすぐに再婚して、おかんの物を捨てた。
家の中、父さんの中から存在が、消えるのが耐えきれなかった。

再婚相手には、18歳になる子供がいて。
淳太と言った。
再婚相手の人も、淳太もとっても優しくて、俺の気持ちを解してくれて。
すぐに仲良くなった。

でも、父さんとだけは話したくなくて。
気が付いたら18歳になってた。
誕生日だからと、久々に一緒に食事をし、話をするというのに持ち出された話は。

「は？見合い？」
「望も18になったやろ？良い娘がいるんや」
「……嫌や、」
「……何？」

普通に恋をする事も、許されない。
もう、我慢の限界だ。

「見合いなんて嫌や」
「会社、継がない気なのか」
「……淳太がおるやん」
「お前じゃないと意味無いやろ」

──そうやって、こういう時ばかり本当の息子だと言う。
いつもは放ったらかしなのに。

「……出てく」
「望？」
「こんな家もう嫌や！！」

そう叫んで、制止する声も聞かずに家を飛び出した。
外に出ると雨が降っていて。
俺の、心みたいだと思った。

雨の中、無心で走っていたら段々と体力が無くなってきて。
目に入ったアパートの入口に座ったら、力尽きて意識を無くした。

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