恋を拾う。 (ページ15)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:73,549 hit

15 ページ15

「ただいま」
「…おかえりなさい」
「望帰ったのか、」
「…っ、はい」

ちゃんと話がしたいです。
そう目を見て伝えると、分かったと応えてくれた。

父さんの部屋のドアをノックして、返事を聞いてからゆっくりと開けて入る。
この部屋に入るのは何年振りなんだろう。

「失礼します」
「望、今から敬語は無しにしよう」
「…え？」
「親子の会話をしようか、」

そう言う父さんの姿は“社長”じゃなくて、昔一緒に遊んでくれていた“父親”だった。

「すまなかったな」
「え…」
「母さんに怒られたよ」

夢に何度も出てきて、望の事もっと考えなさい！って怒るんだ、とどこか嬉しそうに話をした。

その顔は、母さんが生きていた頃、遊ぶ俺たちを見ていた目と同じで、泣きそうになるのを必死に堪えた。

「お前が小さい頃、厳しくしてたら言われてたんだ」
「母さんに…？」
「あぁ。きっと、仕事の事ばかりで望の事考えてなかったから出てきたんだろうな」

ちょっと怖かった。と苦笑いするのを見て、思わず笑ってしまって。
まずい、と思ったけれど父さんは笑っていて。

「なぁ望、好きな人がいるんだろう？」
「え……」
「この間まで、世話をしてくれた人の事が」
「なんでそれ…」

淳太に少し聞いてな、とさっきまで笑っていたけれど途端に真剣な目になった。

「世間に色々言われて辛い思いをするのはその人だ」
「…はい」
「守る自信はあるのか？」
「あります」

絶対に、守ります。
父さんの目を見てはっきりそう言うと。

「分かったよ、」
「父さん…ありがとう」

今度ちゃんと紹介しろよ、と笑った。
それに頷くと、もう休みなさいと言ってくれた。
会釈をして部屋を出ると、淳太と濱ちゃんがおって。

「な？わかってくれたやろ？」
「おん…ありがとう」
「藤井さん、迎えに行く為に頑張るんやで」
「はい。」

厳しく行くで？と不敵な笑みを浮かべた淳太に少し背筋が凍ったけれど、

“必ず、迎えに行く”

その想いが強くなった。

next.