没落した元王家御抱え武器工房の跡取りは世界の命運を握っているようです (ページ3)

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ep.3 Confession ページ3

ふと目を覚ますと、目の前にエルがいた。

「あ、いや、その、違くて、タイミングが悪かったというか。」

エルは何やら弁解をしている。

「A、何してるかなって思って、来てみたらまだベッドで寝てたから、驚かせようと思って、布団めくってみたの。泣いてるなんて思わなくて…」

…泣いてる？頬に手を当ててみると、確かに指先が湿るのを感じた。

「…そうか、泣いてたのか。もう3年も経つのにな。」

「3年？…あ、そっか。今日はおじさんの命日だったね。」

父さんが死んでから3年が経った。〈アヴァロン・クラフト〉を継いでからなんとか遣り繰りして暮らしてはいるものの経営は厳しく、維持費や材料費、人件費などを支払うと手元には雀の涙ほどしか残らない。

「ったく、最近は全然注文が来ないな。まぁ、それだけこの国も平和なんだってことなんだろうけどな。」

「まあね。今時注文する武器なんて装飾品か贈答品としてのものばかりだし。…Aもそういうの作ればいいのに。」

「俺が作るのは武器だ。お飾りじゃねぇ。そういうのは他の工房に任せとけばいいんだ。」

「全く、変なプライドのせいで〈アヴァロン・クラフト〉を潰さないでよね。」

「へっ、いいよな、天才魔術士サマは。宮廷魔術士に推薦されたんだろ？街じゃその話題で持ち切りだ。」

エルは幼い頃にこの街にやって来た流浪の魔術士に才能を見出だされて以来、彼の下で修行している。エルには天賦(てんぷ)の才があったらしく、メキメキと頭角を現したのだ。現在はその才能を買われて街の自警団の魔術士部隊に所属している。

「あぁ、その話…実はね、断ったんだ。」

「…はっ？断った？ちょっ、何でだよ。宮廷魔術士なんて滅多になれるもんじゃないぞ。給料だっていいし、それに…」

「決めたんだ、もう。」

困惑するAの言葉をエルは遮る。

「何か理由があるのか？」

「…うん、私、明後日死ぬから。」

エルの口から出たその言葉は、Aから声を奪ってしまったようだった。