セブチ宿舎の管理人 (ページ9)

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「ヌナこっち…！」

『もう何？私忙しいんだけど…。』

キョロキョロと廊下を見渡したミンギュは誰もいない事を確認し、私の腕を引っ張って部屋の扉を閉めた。ゲストルームとして使われている部屋に呼び出すあたり用意周到。何故ならここを使用する機会は少なく、滅多に人の出入りはないからだ。ゲストルームなんてものは言い方だけで、今は入らなくなったメンバーの荷物入れとなっていた。

荷物入れと言っても十分部屋としては成立している
メンバーの部屋から遠いこの部屋にいっその事移動しようか
そしたらこの変な今の状況から少しは解放されるかもしれない

「あの事誰にも言ってないですよね？」

『あの事って？』

「忘れたんですか！？俺とのファーストキスを」

『忘れるわけないじゃない。でもアレってキスって言えるのかな？』

「え、キス以外何があるんですか？」

『でも事故みたいなもんだったじゃない？』

アレをファーストキスと言っていいものか疑問。ミンギュとキスをしたのは事実だ。でもそれは偶然が重なった出来事に過ぎない。

「ヌナが乗っていた脚立から落ちそうになって、俺が支えた瞬間にこう見事に重なったじゃないですか？ヌナと俺の唇が！」

『そうだけど…。』

「だったらメンバーの前で言ってもいいんですね？ヌナのファーストキスは俺が相手だって。ジョンハニヒョン自分が一番じゃないと怒ると思うなぁ。シュアヒョンもさっきヌナにキスしてたみたいですけど」

『さっきの見てたの！？』

「誰が先にヌナを落とすかってヒョンに言われてから、ヌナの行動はメンバー全員チェックしてますよ。だからヌナと会う時はこそこそしなきゃいけない訳ですけど」

それってつまり、私はメンバー全員に監視されてるって事で
一人の時間もなく、推しのウジ君を愛でる暇もないと？

『あんまりだ…。』

「そんなに悲しまないで下さい。ヌナが俺を選んでくれれば丸く収まる話なんですから」

『ミンギュを？』

「誰か選んでおいた方が楽じゃないですか？ヌナが俺のモノになってくれれば、他のメンバーも手を出してくる事もなくなると思います」

確かにミンギュの言う事も一理ある
でもそんな安易な考えで選んでいいものだろうか…。

「ふーん…そうやってヌナを誘惑するんだ」

「ウォヌヒョン！？え、なんでここに…、」

ここゲームするには穴場だからと、スマホ片手にウォヌは言った。