義理の兄は医者でした3 (ページ30)

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TH「ん」

今度は左手を私の方に差し出してきた。

今度は薬の袋よりも二回りほど大きめのビニール袋。うちの近所のドラッグストアのロゴが印刷されている。

中を見ると、いろいろな果物のゼリーやスポーツ飲料、ミネラルウォーターが入っていた。

『えっと…え？…ありがとう。』

まず初めに戸惑い。
私にあまり好意的な態度を取らないテヒョン君が、まさかわざわざこんなことをしてくれるなんて思わなかった。

TH「ユンギヒョンから昨日の染料が原因だったって聞いて…。悪かったなって。」

目を逸らしながら私の方は見ずにそう言ったテヒョン君。

なるほど。それを気にしてわざわざこんなに色々買ってきたくれたわけだ。

意外と可愛いところもあるじゃん、テヒョン君。

『ありがと。でもテヒョン君のせいじゃないし全然気にしないでね。』

これは紛れもない本心。
私自身だって自分にアレルギーがあることを知らなかったんだから、テヒョン君に非は全くない。

むしろ美容院とかで高いお金をかけた後に気づくよりもよほど良かった。

TH「うん…。あの、俺、パッチテストとかしなかったから…だから、その、悪かったなって。」

気まずそうに下を向くテヒョン君は何だか泣きそうに見える。

『あはは笑。そんなのわざわざする人の方が珍しいでしょ。染めてって言い出したの私なんだし、本当に気にしないでね。』

それでもやっぱりテヒョン君は優しすぎるのか申し訳なさそうな顔をしながら気まずそうに手を前で組みなおした。

何というかテヒョン君って不良のような見た目にそぐわず律儀で真面目だ。

TH「じゃあ、その、俺部屋戻るけどなんかあったら呼んでくれていいから。えっと…おやすみ。」

ところどころ言葉を区切りながらそう言ったテヒョン君。
割とはっきりものをいうテヒョン君が口篭ってるのは何だか珍しくて可愛かった。

『うん、わざわざありがとね。これもいただきます。』

もらったビニール袋を軽く持ち上げてお礼を言うと今度は何も返してくれなかった。

でも、去り際の後ろ姿、髪の間から覗く耳は赤く染まっていた。

ドアが閉まり切ったことを確認すると、薬の開封を始める。うわぁ、それにしてもたくさんある。

食後に3錠ね、

普通のご飯を食べるほど体は元気ではないため、テヒョン君が買ってきてくれた苺ゼリーを開封して食べる。

真っ赤なイチゴの果実入りのゼリーはテヒョン君の去り際の耳を彷彿させて1人で笑みが溢れた。