267.感情に蓋を。 慶舎side ページ28
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「慶舎、Aの事を頼みます」
たったその一言だけ。李牧様が私にAを預けっていった理由。Aが秦国の出だと聞かされてはいた。だが、何故Aが敵国の宰相である李牧様の元に来たのかわからない。それも自らの足で。
「A、一緒にお茶でもどうですか?」
「結構です…。」
「そう警戒しなくとも、今日は何も入っていませんよ。ああ、勿論私が秦国で貴女に振る舞ったお茶にも何も入っていませんでしたが」
「嘘つかないで下さい!あの時、李牧さんが淹れたお茶を飲んで私は意識を手放した。忘れていませんから!」
「そのお陰でよく眠れたんですよね?では、私のお陰と言うことで。どうぞ、お茶を」
「私は無理矢理、李牧さんに眠らされたんです!」
文句も言われながらも嬉しそうな李牧様の顔。元々優しい顔つきをしているが、Aを見る李牧様はそれ以上に優しく、甘い表情。
二人は以前からの知り合いだと、この時の会話で知った。
「あの、慶舎さんも一緒にどうですか?」
「私は…。」
「ずっと立ってばかりで、疲れると思いますし。それに私…慶舎さんと話がしてみたくて」
突然のAからの言葉に戸惑う。私と話がしたいと思うのは、李牧様だけだと思っていた。大体の奴らなら無表情で何を考えているかわからない私と、会話などしたいと思わない。むしろ関わりたくないと遠ざける程だ。
それなのにAは……。
「私との会話では不満と言われているようで、Aに興味を持たれる慶舎に妬けてしまいます」
「李牧様、私は別に嬉しくなど――」
弁解などする必要もないのに、私は何故か焦ってそう口にしていた。Aが自分に興味など抱く訳はないとわかっているのに。
「慶舎さん、座って下さい」と私の手を握るA。
彼女の見惚れる位に綺麗な微笑み。
あの日から、自分の気持ちがわからない。
胸に感じた痛みと、その痛みすらAが隣にいてくれるなら心地よいものだと。
「私は……どうすればいいのだろう…。」
Aの天幕内に飛び散った血と躯。取り敢えず自分の天幕内へと連れ帰ってきたものの、Aは私の寝台で眠ってしまった。起こすことも出来ず、じっとAの寝顔を見つめてしまう。
可愛いと素直に思った。
触れて見ようと頬に伸ばしかけた手を、グッと堪える。
「私は……李牧様を裏切る事は出来ない…。」
椅子に腰を下ろし、何も見ないように目を閉じた。
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S - 初コメ失礼します!キングダムにハマって昨日この小説を一から読んだんですがほんとに号泣で最高です!これからもがんばってください (3月31日 13時) (レス) @page50 id: 458c8fefa1 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» コメントありがとうございます。確かに、自分でも早いと思ってます笑。引き続き読んでいただけたら、嬉しいです。ありがとうございますね。 (2020年6月12日 19時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - 最近は更新スピードがとても速いので嬉しいです!唯一無二の花嫁。7も必ず読みます♪無理せず更新頑張ってください(^^) (2020年6月11日 19時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 海さん» ありがとうございます。私も、読者様がこの作品を読んでくれることと、コメントをもらえることが原動力になってます。更新頑張ります! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ゆうあさん» はい、宜しくお願いします!こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます。頑張りますね! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年12月30日 16時