乱れる程に甘く香る。2 ページ33
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端和様の言う通り、部屋は甘い香りに満ち溢れていた。後ろ手に鍵を掛けたのは、香りを外に出さない為、Aを誰の目にも触れさせないようにする為。その程までにこの甘い匂いは人を狂わせる。
自我を保っていられない。
俺の下で羞恥に肌を赤く染めるAの体を気遣う余裕もない程、本能のまま手荒く扱ってしまいそうで、華奢な体を壊してしまいそうで…。
「痛…っ…。」
「A…?」
何も考えず繋がりを強要。Aの声に我に返った俺は、どんな風に自分がAを抱いたのか思い知らされた。体に残る無数の鬱血痕。吸い付いては噛みつき、肩口から僅かな出血。動きを拘束し、細い腕には締め上げた時に出来た俺の手痕がついていた。
ようやく理解した。
端和様が危惧していたことを。
「オ前ヲ傷ツケルツモリハナカッタ。スマナイ…。」
こんなつもりではなかった。優しく抱くことも出来ず、自分の欲望のままにAを抱き、そして傷つけた。俺を見るAの目から涙が溢れ、その涙を拭うことも今の自分には許されないようで、組み敷いていたAの体から離れた。
強引とは違う、今日の俺の行動は明らかに常軌を逸していた。
「コレ以上…オ前ヲ傷ツケタクナイ。明日ノ朝、オ前ヲ平地マデ送ル。ココニハ誰モ近ヅカヌヨウ、扉ノ前デ俺ガ見張ッテオク。オ前ハ安心シテ眠ルトイイ」
「バジオウさんは…ここにはいてくれないんですか?」
「今ノ俺デハ…、」
「側にいてください。バジオウさんに会いたくて、ここまで来ました。突き放したりしないでください。どんな風に抱かれても、バジオウさんがくれるモノなら……私は嬉しい」
背中に伝わる体温。
俺を抱きしめてくれるAの腕は、体は、心はとても温かい。昔の俺は生きることに必死で、人であることも一度捨てようとした。だが、端和様に出会い多くの仲間に出会い。
何より、この世の中にこんなにも愛しい女がいると知った。
「今カラハオ前ヲ優シク抱ク。イイカ?」
「はい…。」
汗で顔に張り付いた髪を指先で払い、労わるように抱きしめたAの体をゆっくり寝台へと押し倒していく。
目を閉じ俺の首元に腕を回したAの柔らかな唇に、自分のモノを重ねた。
今度は優しく、甘い記憶を植え付けるように。
色褪せない思い。1 霊凰 (いちご飴様リク)→←乱れる程に甘く香る。1 バジオウ (ヒナ様リク)
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bluemoon(プロフ) - りんさん» はじめまして。返信遅くなり申し訳ありません。私なりの解釈で慶舎を書かせてもらいましたが、お話しを気にいってもらえたのなら嬉しいです。番外編にも登場させたいと思っています。主人公と幸せになってもらいたいので。こちらこそコメントありがとうございました。 (2020年9月4日 22時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
りん - はじめまして。感謝をお伝えしたく書きこみします。キングダムにはまったばかりでしたが、bluemoonさんの小説でキングダムをさらに楽しむことができました!私は慶舎が好きなのですがbluemoonさんの書く慶舎がとても好きです。素敵な小説本当にありがとうございました! (2020年8月21日 13時) (レス) id: 1e1ceb0c12 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、ちぃさんにはリクエストもいただいて、楽しくお話しを書く事ができました。取り敢えず完結と言うことで。また短編が書きたくなったら考えてみようかなと思います。まだ、出してないキャラも沢山いますから笑 (2020年8月13日 9時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 短編おつかれさまでした!どのキャラの話もドキドキして恋しちゃうような素敵な作品ばかりでした!bluemoonさんの作品、本当に大好きです!引き続き本編も楽しみにしています!が!暑い日が続いていますのでご無理なさらず、お体ご自愛くださいね(^^) (2020年8月13日 8時) (レス) id: fe5c27facf (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 猫猫さん» コメントありがとうございます。ですが、この短編は完結となっておりますので、以後リクエストを受け付ける事をしないつもりです。答えられず申し訳ありませんが、ご了承ください。お話しを読んでいただきありがとうございました。 (2020年8月12日 23時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年11月19日 11時