唯一無二の貴方。2【キングダム】

幸せとは。2 ページ31

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やり場のない気持ちを、どうにもならない憤りを、静めようと思っても目を閉じればさっきの泣きそうなAの表情が頭をちらついて眠れない。

今頃、二人で何をしているのだろう。
誰も邪魔されず、二人きりの部屋で。


「っ…何で俺は…っ…！」


吐き出したのは自分自身への怒り。どうせ俺なんか見向きもしない、愛されないと卑屈になって。

傷ついた俺に優しくしてくれたのはAだけだと言うのに。
生きろと、俺に寄り添い支えてくれたのはAだけだと言うのに。


「俺が悪かった……戻ってきてくれ…A…。」

「成蟜…？」

「何故、ここに…？」

「なぜって、私がいないと困るかなと思って。成蟜に限ってそんな訳ないと、」

「お前が居ないと駄目に決まってるだろ！お前が側に居ないと俺は……！！」


寝台から飛び起きた俺は、初めてAを抱き締めた。前に抱き締めた時は両手を繋ぐ鎖が邪魔で、暗い牢の中だったから。

絶望にうちひしがれていた俺に手を差しのべてくれたA。生きる事すら諦めていた俺に、生きて欲しいと俺の為に泣いてくれたA。

あの日全て失ったと思っていた俺に残された者。


「お前が俺を救ってくれた。お前が俺の全てだ。お前が好きで、Aが好きで……俺は素直じゃなかった…。側にいてくれと、その言葉が言えなかった…。政の元へと行くなと何度も心で叫んで、だが力のない俺ではお前を幸せになど出来ぬと言い聞かせて…。」

「成蟜の側にいれるなら、私何もいらないよ。貴方の側にいれるなら…。」


俺の思いに答えてくれるように、Aも俺の背に腕を回して抱き締めてくれる。

誰かに愛されたいと思っていた。
自分だけに注がれる愛が欲しかった。

地位も名誉も、権力さえあればどうとでもなると驕っていたバカな自分。人の思いも、人の願いも、自分さえよければ後はどうでもいいと、捻れた思想が敗因だとするなら。

それに気づかしてくれたのも、皮肉な事にまた人の思いや願いだった。


「俺は全て失ってはいなかったのだな…。」

「成蟜…？」

「お前が俺の元に居てくれる…。Aの言うように、俺もお前が側にいてくれるなら。それだけでいい」


初めて好きだと伝えた。

失って得たもの。

大切な者は、この腕の中にいる。

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