特別扱いして欲しい。1 政 ページ3
.
「信、怪我見せて」
「いっ…もうちょっと俺のこと優しく扱えよな!」
「無茶ばかりする人には優しくしません。いつもいつも心配する私の身にも…な、何よ?」
「いやぁ俺お前に愛されてると思って。文句言いながらも怪我の治療までしてくれて、食べさせてもくれるだろう?おまけに寝るときは安心できるからって隣で寝てくれるし、」
バンッ…と匙を机に叩きつける音。何事かと音のした方に視線を向ければ、政の不機嫌そうな表情。いつも無愛想な気もしないでもないけど…特に不機嫌と言うか。
「お前らさ、仲良いのは別に構わねぇよ。でも、それを見せつけられるオレと政はなんて言うか…。そう言うのは二人きりの時に、」
「二人きりでもするな。気分が悪い」
「お前、Aに相手にされないから嫉妬してんだろ?」
「信、余計なこと言わないの!ごめんね政、機嫌直して、」
食事もそこそこに政は何も言わず部屋を出て行った。静かな部屋に貂のため息。政と知り合って数日、下僕の信や私と違い政は王室の生まれ。王弟反乱を手助けするために手を組んだ私達は言わば寄せ集め。親しくなろうにもどう接していいのかわからないままだった。
「Aはオレらよりも前に政と知り合ってたんだろう?」
「うん…漂と一緒に昌文君さんに王宮に連れて行かれたから」
「オレや信に対する態度は横暴だけどさ、政はAにだけは優しいよな」
「俺はそれが気にいらねェ。ったくどいつもこいつもAに手を出しやがって」
「政はまだAに手を出してねぇだろ?」
そうだよな、と聞いてくる貂に私は曖昧な返事で返す。本当は知り合ってすぐにキスまでされたとは言えない雰囲気。信に知られたら喧嘩になるに決まってる。
「政……起きてる?」
部屋をノックしても中から返事はない。夕食をとっていない政に食事を持って行ってくれと貂に頼まれたのはいいけど、寝てるならと踵を返そうとした時だった。
「……入れ」と扉が開き政が私の腕を掴む。薄暗い部屋に蝋の灯りだけ。ゆっくりと扉が閉まると、背後から政に抱きしめられた。
「あ、あの政…、」
「お前と信の境遇は知っている。同郷で昔からの馴染みだと言うことも。だが、それを目の前で見せつけられるのは我慢できない。冷たいように見えても、好いている女が他の男と親しくしているのは嫌だ」
耳元で話す政の声に、手にした盆を落としそうになった。
242人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
bluemoon(プロフ) - りんさん» はじめまして。返信遅くなり申し訳ありません。私なりの解釈で慶舎を書かせてもらいましたが、お話しを気にいってもらえたのなら嬉しいです。番外編にも登場させたいと思っています。主人公と幸せになってもらいたいので。こちらこそコメントありがとうございました。 (2020年9月4日 22時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
りん - はじめまして。感謝をお伝えしたく書きこみします。キングダムにはまったばかりでしたが、bluemoonさんの小説でキングダムをさらに楽しむことができました!私は慶舎が好きなのですがbluemoonさんの書く慶舎がとても好きです。素敵な小説本当にありがとうございました! (2020年8月21日 13時) (レス) id: 1e1ceb0c12 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、ちぃさんにはリクエストもいただいて、楽しくお話しを書く事ができました。取り敢えず完結と言うことで。また短編が書きたくなったら考えてみようかなと思います。まだ、出してないキャラも沢山いますから笑 (2020年8月13日 9時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 短編おつかれさまでした!どのキャラの話もドキドキして恋しちゃうような素敵な作品ばかりでした!bluemoonさんの作品、本当に大好きです!引き続き本編も楽しみにしています!が!暑い日が続いていますのでご無理なさらず、お体ご自愛くださいね(^^) (2020年8月13日 8時) (レス) id: fe5c27facf (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 猫猫さん» コメントありがとうございます。ですが、この短編は完結となっておりますので、以後リクエストを受け付ける事をしないつもりです。答えられず申し訳ありませんが、ご了承ください。お話しを読んでいただきありがとうございました。 (2020年8月12日 23時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:bluemoon | 作成日時:2019年11月19日 11時