唯一無二の貴方。2【キングダム】

貴女としたいこと。1　仁 ページ1

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「Aさん…可愛いよなぁ」

「ずっとそればっかりだよね、兄ちゃん。確かに優しくて可愛いけど…隊長の彼女だって噂だし。兄ちゃんにはその高嶺の花って言うか…、」

「うっせぇな！お前に言われなくてもそんなこと、」

「こら、弟いじめちゃダメじゃない」


小突くつもりで振り上げた拳は行き場をなくし、宙に浮いたまま。俺の振り上げた拳にAさんの手が添えられて下に下ろされる。目の前に思いを寄せてるAさんがいるってだけで、さっきからドキドキと鼓動が高鳴り、それも俺の手に触れているなんて…。


「兄ちゃん、顔真っ赤…。」

「なっ、お前な！」

「ケンカはダメって言ったばかりでしょ」

「あ、すいません…。」


怒ってるよな、と上目遣いにAさんを見れば、俺と目が合ったAさんは微笑んでくれた。もうそれだけで俺は天にも昇るような状態で、好きですと叫んでしまいそう。


「A、何してんだよ？」


ごく自然にAさんの腰に腕を回し自分の方へと引き寄せる隊長に、「信、飲みすぎじゃないの？」と苦笑いを浮かべながらもAさんは隊長の腕を振りほどかない。

触らないで下さい！と隊長に言える立場なら、迷わず言った。でも、俺は飛信隊に入って日も浅く、それ以前に俺なんかがAさんに思いを寄せていることじたい迷惑に違いない。


「淡、行くぞ」

「え、兄ちゃん…！待ってよ！」


逃げ出したのは俺の方。隊長とAさんの親しげな様子をこれ以上見ていられなかったから。

肝心な時に何も聞けない臆病者。二人が直接付き合ってるって聞かされた訳でもないのに、自分でそうだと勝手に決めつけて。


「兄ちゃん…そんなに好きなら思いを伝えたら？で、フラれてすっきりしなよ」

「フラれてって……まぁそうだよな。結果は目に見えてるよな」


手に弓を持ち、迷いを断つように的に照準を合わせる。常人では捉えることすら出来ないほどに遥か遠くに建てられた的。

狙うはど真ん中のみ。


「十連続けて真ん中を射る。で、俺がAさんとしたいことその矢に願い込めるから。全部当たった時は…自分の思うままにそうしようと思う」


ギリギリ…と限界まで弓をしならせ狙うは一点。この矢のように真っ直ぐに貴女の心に思いが届くように、俺は自分の思いを口にした。

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