202.巡り合わせ。 ページ11
.
「交渉はどうなったんですか？」
「互いに本心を見せず、腹の探りあいだ。李牧も中々に肝の据わった男だが、丞相の方が上手だった。秦国に有利になるよう便を謀った丞相は流石と言うしかない。それにしても……お前、李牧に以前会ったことはないか？」
「いえ、ないと思います。どうしてそんなこと聞くんですか？」
「少し気になる事があったからだ。李牧は誰かを探しているような素振りで、妙に落ち着かなくてな。噂に聞くところによれば、王騎将軍の娘を探していると」
「私……ですか？」
なぜ私を探しているのか、李牧と言う名前に心当たりはない。父上の仇だと昌平君さんに教えてもらうまで知らなかった相手。その人物が私に何の用事があると言うのか。
「引率はここまでだ。私は用があるため席を外すが、祝宴にはお前の馴染みもいるだろう。羽目を外して当初の目的を忘れるな」
「昌平君さんは一緒にいてくれないんですか？」
「私が側にいないと不安なのか？」
「そういう訳では…、」
痛いとこをついてくる。確かに不安だけど……不安しかないけど。弱味を見せるのも嫌で、俯いた私の頭に乗せられた大きな手が優しく髪を撫でた。突然のことに驚き顔を上げた私の体を抱き寄せ、包まれた先は昌平君さんの腕の中だった。
「お前の力がそうさせるのか、それともお前自身が私を引き寄せるのか……。与えられた力に意味があるなら、それを使わない手はない。王の力に、秦国の為に自分に何が出来るか考えてみろ？」
囁く言葉は、甘いようで残酷。
つまりは自分の体を使えと、そう言われているよう。確かに非力な私が皆の役に立てるとするなら、それも一つの手段かもしれない。
でも……誰彼構わず心を開くことは……。
「A……だよな？」
昌平君さんを見送る私の背に声がかけられた。
「信……。」
「ど、どうしたんだその格好！？久しぶりに会ってなんか……スゲー綺麗になってるし」
「信は背が伸びて、体も逞しくなったね」
「ま、まぁな」
照れくさそうに頭をかいた信は、「中入ろうぜ」と躊躇いがちに私の手を握った。手を握るのは初めてでもないのに緊張している様子の信は、私と目を合わそうとしない。
「A、ここの席開いて――」
「彼女を親しげに呼んでる君は一体何者ですか？それと、掴んでいる彼女の手を今すぐ退けて下さい。不愉快なので」
「お前はっ…！」
聞こえてきた声。
見上げる先には、前に一度会ったことのある男の人がいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 438人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「キングダム」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
caho(プロフ) - 王騎や騰との子作りや妊娠話、幸せ展開が見たいです。もっと早く主様のお話を見つけたかったです（ ; ; ）最高です。 (2022年10月13日 1時) (
レス) @page7 id: 7b5b48dd3d (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 紗里さん» コメントありがとうございます。作品を書くにあたり私も王騎将軍との恋愛であったりお話しを書くのが、とても楽しかったです。花嫁7では、序盤から騰との絡みを予定してますので。楽しんでいただけたらと思ってます。移行準備頑張りますね！ (2020年6月19日 6時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
紗里 - 実写からキングダムにハマり単行本を一気読みして王騎将軍がうたれたときには涙が止まらなくそしてここで王騎将軍と恋愛できとても嬉しく感動です。他の人との絡みも絶妙ですごく面白いです。できれば騰とのつながりがみたいです。でもバジオウもすてがたいです。 (2020年6月19日 0時) (レス) id: 4fff12daeb (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» シリーズ6では、初めから二人と絡ませました。今後また出会う時の展開として。色んなキャラが多すぎて、どうお話しを持っていこうかと…嬉しい悩みではあります笑 (2019年12月30日 16時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - bluemoonさん» 特に合従軍編が色んなキャラが出てきますもんね！推しの項翼と白麗が出てきたらニヤニヤしっぱなしですw更新待ってます♪ (2019年12月30日 8時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：bluemoon
| 作成日時：2019年10月6日 3時
