167.開戦。 ページ24
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「凄い数の兵…。」
「丘から見下ろすと、また一段と壮観ですねェ」
馬陽の城を取り囲む趙の大軍十二万。
その城を奪還するべく招集された秦軍十万。
雌雄を決する戦が目の前で始まろうとしていた。
「あの父上、なぜ進軍させていた兵を突然横へと移動させたんですか?」
「ンフフフ。さァ、どうしてでしょうねェ。A、前方に何が見えますか?」
開けた壮大な大地と、それと同じように荒れた土地。上空の戦では関係ないような地理でも、今行われようとしている戦場は地上。戦うとするなら、機動力を活かせる障害物のない場所が得策。
「趙軍の武器として騎馬隊があります。相手が我々より数で勝るなら、私達は策で対抗すればいい。より有利に戦が運ぶように、騎馬の機動力を封じる乾原まで敵を誘いだしましょう」
これから起こりうるであろう展開を想定して兵を動かす父上。
今ではなく、先を見る力。
「熱い眼差しで私をじっと見つめて、また私に惚れ直してしまいましたかァ?」
「そんな訳ないじゃないですか!」
「ココココ。素直じゃないですねェ……。A、この戦いで私から多くの事を学びなさい。天下の大将軍である私から直々に手解きを受けることは、後にも先にもこの一回だけかもしれませんから…。」
「父上…?」
「私の顔ばかり見ていないで下さい。今から"主攻"である蒙武将軍の先鋒隊が動きますよ」
敵味方両軍の配置が決まった。
父上の策通り攻めてこない秦軍の誘いを受ける趙軍。正面突破を避け、秦軍本陣右脇を突こうとする作戦。趙左軍6万。それを迎え撃つのは蒙武将軍率いる秦右軍4万。
それに比べ障害物に囲まれた秦左軍と趙右軍は、共に全軍から孤立した感があった。
蒙武将軍の突撃の合図で始まった戦。
互いの兵が激突する瞬間、砕け散る敵の将。
蒙武将軍の振り下ろす攻撃の威力は凄まじく、一太刀浴びせるどころか吹き飛ばされていく兵達。一瞬にして、蒙武将軍の前に道が開く。
「す…凄い…。父上、蒙武将軍強すぎじゃないですか!」
素直な感想を口にすれば、隣にいる父上は不機嫌そうな表情。
「強いのは蒙武将軍だけでなく私も同じです。あれぐらいのこと私でも造作もなくやってみせます。理解出来たら余り他の男を誉めないで下さい」
いいですねと念を押され、私は頷いた。
これは父上の嫉妬だ。
「少し本陣を離れます。A、私の後に付いて来なさい」
突然馬を走らせる父上に、戸惑いながらも馬の腹を蹴って私もその後を追った。
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caho(プロフ) - このような最高の作品を生み出してくれて本当にありがとうございます!!王騎将軍と騰将軍が大好きなので嬉しいです!騰との夢小説も読みたいです!成人済みですので大人向けめちゃくちゃ需要あります!!!書いていただけると嬉しいです!! (2022年10月13日 1時) (レス) @page36 id: 7b5b48dd3d (このIDを非表示/違反報告)
青蘭 - 初めまして。作品楽しく拝見させていただいております!王騎将軍押しなので救済ルート楽しみにしています!また5以降のパスワードを教えていただくことは出来ますか? (2022年8月6日 11時) (レス) id: 01e5ca7667 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - manaさん» mana様初めまして。作品を読んで頂いてありがとうございます。この小説のオチは政に決まりましたので、引き続き読んで頂ければ幸いです。コメントありがとうございますね。 (2022年6月27日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
mana(プロフ) - 初めまして!最近小説を読ませて頂きました。ものすごく引き込まれてドキドキしっぱなしで、最高の小説に出会えて感謝しております(;o;)私は政推しなんですが、4以降が今パスワードがかかっているので、続きが見たくウズウズしてます笑 楽しみにしてます‼︎ (2022年6月26日 23時) (レス) @page49 id: 1660ce1fd8 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - あいさん» とうとうその時が来たね…。私も書きながら切なくなってるよ…。今まで先伸ばしにしてきたけど、やっぱり避けては通れない展開かと。続編も頑張るよ!あいさんも体調に気をつけてね!私も応援してる(#^.^#) (2019年10月3日 22時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年7月21日 8時