163.言いたい放題。 信side ページ20
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「おいっA、何かあったのか?」
「なんでもないよ…。」
「なんでもないって、お前王騎将軍のいる本陣にいたんじゃ、」
「本当に何でもないから…。」
空が白む頃、本陣から馬を走らせ俺達歩兵軍の寝床にしていた場所に、Aがやって来たのは突然だった。寝ぼけていた周りの奴らは飛び起き、Aを前にして中には正座なんかしている奴もいた。
王騎将軍の娘…。
そうだと知らなかった奴は、戦場に現れたAの姿に色めきだっていたが、将軍の娘だとわかった途端に手のひらを返したように静かになった。
「なぁなぁ信、お前この可愛い子と知り合いなのかよ?」
「里典のとこで一緒に下僕として生活してた。俺と漂の馴染みだ」
「へ?マジでか…?」
俺の言葉に間の抜けた返事で、嘘だろと呟く尾平が俺とAを指差しては首を傾げる。
「ちなみに、Aとは前に一度あってんだけどな。ここにいる奴等の大半は」
「魏を攻めた時か…。伍に参加していたな」
羌瘣は初めからAが女だとわかっていたみたいだ。
女の勘って言うのか?
それとも自分が女だから…同じ匂いがしたとか?
「まさか…、あの時一緒に戦った小さい少年が…。」
「う、嘘だろ!?いや、待てよ。思い起こせば、やけに信が気にして庇っていた時はあったけどよ…俺はてっきりお前は男の趣味があるのかと、」
「尾平お前な!俺が好きなのはAだけだっ!」
シーン…と静まるその場。
俺を見てる皆の目が、なんと言うか。
例えるなら、憐れむようなそんな目。
Aは顔を赤くして俯いていたけど、皆の視線が痛い。
「お前には無理だ」と羌瘣。
「お前と彼女じゃ天と地ほど不釣り合い」と尾平。
尾到は……無言のまま。
むしろ、何か言ってくれ。
「王騎将軍の娘さんでは何て言うか…。信君、越えるべき壁が高すぎのような気がします。何度も無謀な戦いに挑んできたのは承知してます。ですが今回は…。」
優しい澤さんまで俺に辛辣な言葉。
それが逆に胸に痛い。
「お前らな…、」
「あの、信…!」
「なんだよ!」
一発殴ってやろうと尾平の胸ぐらを掴む俺に、側にやってきたAが俺の腕に手を添えた。
そんな些細な事でもAに触れられた事が嬉しくて、自然と顔が緩みそうになる。
「二人だけで…話がしたい。ダメ…かな?」
俺を見つめるAの目が憂いを帯びていて、その場で思わず抱きしめそうになった。
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caho(プロフ) - このような最高の作品を生み出してくれて本当にありがとうございます!!王騎将軍と騰将軍が大好きなので嬉しいです!騰との夢小説も読みたいです!成人済みですので大人向けめちゃくちゃ需要あります!!!書いていただけると嬉しいです!! (2022年10月13日 1時) (レス) @page36 id: 7b5b48dd3d (このIDを非表示/違反報告)
青蘭 - 初めまして。作品楽しく拝見させていただいております!王騎将軍押しなので救済ルート楽しみにしています!また5以降のパスワードを教えていただくことは出来ますか? (2022年8月6日 11時) (レス) id: 01e5ca7667 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - manaさん» mana様初めまして。作品を読んで頂いてありがとうございます。この小説のオチは政に決まりましたので、引き続き読んで頂ければ幸いです。コメントありがとうございますね。 (2022年6月27日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
mana(プロフ) - 初めまして!最近小説を読ませて頂きました。ものすごく引き込まれてドキドキしっぱなしで、最高の小説に出会えて感謝しております(;o;)私は政推しなんですが、4以降が今パスワードがかかっているので、続きが見たくウズウズしてます笑 楽しみにしてます‼︎ (2022年6月26日 23時) (レス) @page49 id: 1660ce1fd8 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - あいさん» とうとうその時が来たね…。私も書きながら切なくなってるよ…。今まで先伸ばしにしてきたけど、やっぱり避けては通れない展開かと。続編も頑張るよ!あいさんも体調に気をつけてね!私も応援してる(#^.^#) (2019年10月3日 22時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年7月21日 8時