唯一無二の花嫁。4【キングダム】

161.見違えるほど綺麗になった。 ページ18

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「す、すいませんっ！すぐに、っ…」


体を起こそうと慌てる私の背中に回された腕。グッと力を込められて立ち上がるどころか、抱き締められた。


「数ヶ月の間にまた綺麗になったな」

「え、その…。」

「殿が…他の男が手離したくない気持ちがわかる」

「あの…騰さん。私をからかってます？」

「なぜそう思う？」


なぜって…いつも飄々として何を考えてるかわからないし、表情も変えないし。

それが本音なのか冗談なのか。


「殿の邸に連れて来られて数ヶ月。殿と同じくお前の成長を側で見守ってきたのは私だ。日々大人の女へと成長していくお前に、特別な感情を抱くのは不思議ではないだろ？」

「そう言われましても…。」


突然の事に返答に困ってしまう。どう答えるべきか悩んでいると、私の名を呼ぶ父上の声が聞こえた。

天幕に私の姿がなくて探しに来たんだろう。


「父上こっちに向かって来てますよ？」

「そうだな」

「こんな所見られたらマズイと思いますけど」


父上の持つ松明の明かりで辺りは明るくなってきて、足音も近くなってきて。それでも、騰さんは私を抱き締めたまま動こうとしない。

ドキドキと脈打つ鼓動。故意はないにしろ、いつまでも二人抱き合っているこの状況を問い詰められたら、上手い言い訳など私に出来そうにない。


「私に黙って、二人で何をしてるんですかァ？」

「あ、その、騰さんに稽古を見てもらっていたんです！」

「こんな薄暗い場所で稽古を？」

「そうですよね？騰さん」


もうダメだと思った瞬間、抱き締めていた私の体を離した騰さんは、青ざめた表情の私とは対照的にいつものポーカーフェイス。

今日に限ってはその無表情が逆に羨ましい。


「殿、私はAがすき――」

「しっー！黙って下さい！」

「A、急に大声を出してどうしたんですかァ？」

「それは騰さんが変な事を、」

「私はただ、Aには攻撃において"隙"が多いと言おうとしただけだが」

「え…、」


完全な早とちり。このタイミングで、その言葉を言われたら勘違いもしてしまう。

父上の無言の圧が怖い。
何かを探るような眼差しに、背中を伝う嫌な汗。


「私に隠している事があるみたいですねェ。問い詰めるのは後にして。先ずは、汗で濡れた体を隅々まで拭いてあげましょう。話はそれからです」


軽々と私を抱き抱えると、父上は天幕へと歩きだす。


「殿、可愛がるのはほどほどにして下さい。明日に響くので」

「善処しますが。どうなるかは、Aの返答しだいですねェ」


どう考えても、嫌な予感しかしない。

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