106.仲違い。 ページ8
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「Aその格好…。まさかお前も戦に参加するのか?」
肌の露出を控えた紺色の長袍(下は白色)。動き安さを重視して、父上が身に付けなさいと手渡してくれた甲冑を断った。女だとバレないよう胸にはさらしを巻き、肩まである髪は一つに束ねた。軽装になった分動き安くはなったが、身を守る甲冑がないため攻撃を直に受けてしまうリスクは高い。
「そのつもりだけど…。ちゃんと伍にも参加して班にも入れてもらえた。ほら、マントを被れば女だって、」
「何考えてんだ!!…死ぬかも知れないんだぞ!お前分かってるのか!?」
「分かってる」
「分かってんなら、」
「私は自分の意思でここに来たの。信達と離れている間、私も王騎将軍の元でただ日々を過ごしていた訳じゃない。強くなるための鍛練もした。私も政を助けたい」
「……なよ…。」
「信?」
俯いている信の握りしめた拳は震えていた。
信の肩に触れようとする手を反対に掴まれ、私を睨み付けてくる信の目はいつもと違って怖い。
「政のためだってふざけんな!命をかけてまで政を助けたいと思うのは、お前が政に対して仲間以上の感情を抱いてるからだろ!?」
「仮に信が政の立場だったとしても、私は同じことした。信も私にとって大事な」
「仲間の一人だって言いたいんだろう?」
「それじゃダメなの?」
「他の奴らと同じ扱いされたくねェ。いい加減気づけよ俺の気持ち!」
「信の気持ち…。」
「子供みたいに喚き散らすばかりでは、思いなど相手に伝わらないぞ。A殿も覚悟を持ってここに来ている」
「その覚悟って言うのが政のために命を賭けるってことなら、俺は納得なんかできねェ…。戦に出たら誰もが自分のことで必死で、生き残るために何でもしなきゃならねェんだ。非力なお前がこの戦場で命を落とすのは目にみえてる」
私の手を乱暴に離した信は、天幕を出て行こうと歩き出す。
痛いぐらいに握られた手。現実を突きつけるような残酷な言葉。
でも、その態度も言葉も私を心配してくれるものだから…。
「信、私絶対に死なない!約束する!」
一度信は立ち止まったが、振り返ることなく出て行った。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時