111.救出。 ページ13
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まるで夢を見ているようだった。
信の放った槍が敵の喉を貫き、目の前で派手な音を立て横転する戦車隊。荷台を引いていた馬に目を付け、それを奪って戦場を駆け回る信。
特別な訓練をした者なら話は別だが、下僕だった信が馬に乗れるなど皆は驚いていた。王弟反乱の際に山の民達と丘を駆け降りた経験がここで役に立っているんだ。
騎馬の機動力を得た信が戦車隊の欠点である車輪を狙い、戦車長である隊長を見事に討ち取った。
「…っ…はぁ…」
「A大丈夫か!?」
「私の…ことはいいからっ…信は皆を、」
息が苦しい。心臓の音がうるさい位に早い。
このままここにいたら可笑しくなりそう。
大勢の兵が入り乱れ、交戦中。
縛虎申隊長の命により、丘頂上の魏副将宮元の首をとるため休む暇もなく突撃させられる。今まで私達が相手にしていた戦車隊は、魏にとって痛手にならないほど小さなもの。多くの兵を失ったのに、そう聞かされると何とも言えない気持ちになった。
「怯むな!!突き進め!!」
縛虎申隊長の激に皆が最後の力を奮い、丘を目指す。隊長の横に並んで走って行く信は、何度も後ろを振り返り私を心配していた。
どんどん皆から引き離されて行く。前へ前へと進む気持ちはあっても、その一歩が遠い。
「動いて…っ!」
立ち止まったら終わりだ。ガクガクと震える足に動けと叱咤しても、言うことを聞いてくれない。
「っ…」
腕に走る激痛。
布に広がる染みで、斬られたと気づいた。
「ガキが兵の真似事か?」
立ち止まった場所は、敵陣の中。
遠くに信達の姿。
周りに味方はいない。
「楽に死ねると思うなよ!秦の犬がァ!」
右手に浮かび上がる模様。
敵よりも早く剣を振り抜いた。
「このガキっ!全員で切り刻めっ!!」
腕から流れ落ちる鮮血に柄を持つ手が滑る。前からの一太刀かわせても、横から背後からの攻撃に対処できない。
もう…無理だっ……!
「全く。子供相手に何人ががりですかァ?こう言うのは見ていて虫酸が走ります。騰、あなたもそう思いますよね?」
「ハ!最低のゲス野郎です」
「父上……。」
「その子は大事な子です。返してもらいましょうか、大切な私の娘を」
馬上から振り回した父上の矛の威力に、成す術もなく敵が吹っ飛ばされていった。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時