110.奇策。 ページ12
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「……策がある」
「羌瘣、今何があるっつったお前!?」
「防壁を作る」
「防壁!?そんなもん一体どうやって作るんだよっ!」
尾平さんの言葉に、羌瘣と呼ばれた少年は地面を指差し「死体を積んで」と答えた。
常軌を逸した行動。考えただけで怖じけついてしまった私を羌瘣が見ていた。
「お前こんな時に何ふざけたこと、」
「信君待って下さい。……皆さん前方に死体を積み上げて防壁を作って下さい!!死体の山で戦車の突進を防ぐんです!!」
澤さんの命令で目の前に死体の山が積み上がっていく。この状況でどこの班だとか言い合っている場合ではなく、自然と伍同士の連携が出来ていた。
「Aは使えそうな武器を拾え」
「でも、」
「お前には死体を運ぶなんて無理だろ?ほら、さっさとしろ」
「う、うん…。」
転がっている武器を広い集め、手に持って立ち上がった私の目の前には、羌瘣の姿。
「あ、あの…。」
無言のままじっと見つめられた私は居心地が悪い。
「お前…男じゃない、」
「A、羌瘣!早くこっちに来い!」
信の呼ぶ声に、逃げるように羌瘣に背を向けた。
突き刺すような視線を背中に感じながら…。
「Aは俺の下にしゃがんでろ。絶対に顔を出すなよ!」
「信…。」
「心配すんな。守ってやるから」
蹄の音がどんどん近くなる。
ガラガラと荷台の引く音。
息苦しいほどの緊張と恐怖。
この作戦が全ての鍵。
「死ねェエエ!!」
突っ込んでくると思われた戦車隊が舌打ちをし、防壁を避けていく。いくつもの重厚な盾とそれを援護するように突きだした槍に阻まれて。
上手くやり過ごしたと思ったのも束の間。旋回した隊がまた戻ってきた。前からの攻撃に特化した防壁。後ろから狙われたらひとたまりもない。再び防壁を作っている時間はなく、敵の投げ槍に味方が次々と犠牲になっていった。
「クソッ」
「戦車の速度が落ちてる。障害物のせいだ」
羌瘣の一言に、信は味方に刺さった槍を体から引き抜いた。
「信、何しようと、」
「なめてんじゃねェぞ、てめェら!!」
静止する私の声にも耳をかさず、迫りくる戦車隊目掛けて信は防壁を飛び出して行った。
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bluemoon(プロフ) - うーちゃんさん» 今晩は。只今編集作業をしている最中で、終わり次第パスワードを外させて頂きます。ご迷惑をおかけ致しますがお待ち頂けますようお願い致します。メッセージありがとうございますね。 (2022年6月15日 20時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
うーちゃん(プロフ) - こんにちは☺︎ 4から見たいのですがパスワードがかかっており見れません(>_<) 教えていただけませんか?すごく面白くて一気読みしてしまいました! (2022年6月15日 6時) (レス) id: ff65ffef2e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - おはようございます。体調だいぶ良くなりました。お気遣いありがとうございます。書きたい衝動になっているので、自分のペースで更新していきたいと思います。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月17日 10時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
Mimina(プロフ) - こんばんわ!体調大丈夫ですか?心配です。元気なったらまた素敵なお話楽しみにしています!ゆっくり休んでくださいね! (2019年8月17日 0時) (レス) id: 4c3be01646 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Miminaさん» 返信遅くなってごめんなさい。ちょっと体調を崩してしまって、申し訳ありません。何回も読んでいただいてありがとうございます!更新頑張らないとですね。ありがとうございました。 (2019年7月31日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年6月9日 7時