唯一無二の花嫁。7【キングダム】

335.突き動かす原動力。 ページ48

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開戦の合図と共に敵は四方八方から攻めてきた。討ち取る相手を政に絞り、当初の目的の降伏するなら殺さずとの条件はなくなった。

一人として、この蕞からは逃さない。
皆殺しも辞さない構え。

政の負傷により士気は大幅に下がった。四方の砦は既に押されている。伝令を告げるのは、自軍に不利なものばかり。助けに行こうとしても、行かせる兵すらいない。


「…流れが敵へと向いている…！貂、打開策は？」

「わかってるよ！待ってくれ…何か他に策は…動かせる兵は…考えろ。この窮地を脱する方法を、ありったけの知識をふり絞れ…！」


蒙毅の言葉に貂は苛立ったように答えた。高台から見える戦場は押し寄せて来る敵兵の姿ばかり見える。


「貂、私も加勢に行く」

「そんな、Aさん危険です！昨日も危ない目に遭ったのを忘れたんですか！？こんな乱戦の中に貴女が加われば、今度は命を落とすかもしれません。ここで僕達と一緒に戦局を見守るのが王の命令でもあります」

「その政が窮地に立っているなら、助けてあげたい。兵が足りないなら補えばいい。微力だとしても、私は戦える！」

「A……行ってくれるか…。」

「貂まで…！兄上を筆頭に、どうしてこうも僕の回りは言いつけを守らない人が多いんだ」


自由奔放な蒙恬さんに振り回されている蒙毅の姿が想像できる。


「くれぐれも無茶だけはしないで下さい」

「うん。じゃあ、行って、」


私の声が大喚声によってかき消された。攻め入られたのかと慌てて階段を覗いても、敵はその位置まで攻め入ってはいない。

だが、喚声は鳴り止まない。
むしろどんどん大きくなる。


「何が起きて…、」


敵味方を掻き分けるように見えた隊。風に吹かれ揺らめく旗に、絶望は希望に変わった。秦国の象徴、金色の甲冑に身を包んだ姿は神々しい。


「大王様ァァァ！！」


喚声は味方から湧き起こったものだった。

馬に乗り颯爽と現れた政は天へと手を掲げ、微笑んで見せた。


どんな局面に立たされていても、人を動かす原動力は心。
その力は困難な時にこそ、大きなうねりを伴い力を発揮する。

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