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アパートまでの道のりをゆっくり進む。足取りが重いのは、気持ちが晴れないからだ。ナムジュン君から聞かされた「あの人も一緒に帰って来てます」と言う言葉。遠く離れた場所にいるなら、顔を合わすこともなかったのに…。
私はまだ同じ職場で働いていて。
彼と関係を持った後輩とも…。
二人は未だに付き合っているんだろうか。
『はぁ…未練たらしいのは私の方か…』
気持ちを入れ替えないと。
部屋にはテヒョン君もいるんだから。
『ただいま…』
「ヌナ、おかえりなさい！」
玄関のドアを開けると同時に私に抱きついてきたテヒョン君。あまりのタイミングの良さに柔らかなテヒョン君の髪を撫でながら、私はテヒョン君の顔を覗き見た。
「なーにヌナ？俺の顔みて」
『テヒョン君、もしかして私が帰って来るのずっとここで待ってた？』
「ううん。俺、ベランダ側の窓からずっとお外見てた。ヌナが歩いて来るの、そこから見てたんだ」
『家のことは？』
「したよ。だって俺、ヌナにいい子いい子してもらいたいもん。でも、今日初めてやったからぜんぜん上手くいかなくて。ジミナやジョングク、ジンさんが手伝ってくれた。少しずつ上手くなっていくから。だから、ヌナも元気だして」
元気だして、テヒョン君に言われて自分がどんな表情をしていたのか、ようやく気づいた。普段通りにしているつもり。でも、テヒョン君はそんな些細な私の表情にも気づいてしまう。
『元気だよ。仕事で疲れていても、テヒョン君の明るい笑顔に癒されるから』
「うん…。あ、ヌナ。先にご飯にする？お風呂にする？それとも…俺にする？」
『ご飯でお願いします』
「えー、俺にしてくれればいいのに」
そんな言葉どこで覚えたのか。
テヒョン君に手を引かれながら部屋の中へと入って行く。
リビングのドアを開けてテーブルの上に用意された料理に驚いた。
『テヒョン君が作ったの？』
「ジンさんが作ってくれた」
『そうなんだ…。』
テヒョン君は料理をしたことがないって言ってたから、ジンさんが手伝ってくれたんだろう。
「でもね、このサラダは俺が作ったんだよ。だから一番初めにヌナに食べて欲しい。俺が初めて作った、ヌナだけの料理」
切られた野菜達は不恰好。
お世辞にも上手とは言えないけど…。
テヒョン君の気持ちが、なによりも嬉しかった。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 13時
