私の彼氏はヒモなんで。2【TH】 (ページ22)

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初めは私の一方的な片想いだった。
同じ部署に配属され、一年先輩の彼に密かに恋心を抱いていた。

挨拶程度の仲が次第に一言二言と会話が増えていき、親睦会を兼ねての飲み会で連絡先を交換した。何気ないやり取りですら私は嬉しくて、彼からカトクは送られて来ないかと鳴らないスマホを握っては願って、送られてきたらそれで返信に困って。

そんなやり取りが半年ぐらい続き。

「ヤンさんと一緒にいると居心地いい」と、言われた事が付き合い始めたきっかけだった。

あの頃の私は彼に夢中で。
彼の言うことには従順で。

今思えば、それが彼にとっては退屈だったのかもしれない。
素直に従う私に、物足りなさを感じていたのかもしれない。

そんな彼の変化に気付かず、日々会った事を私は仲の良い後輩に話していた。彼女は「先輩達は私の理想のカップルです」と言っては、嬉しい言葉をくれて。

だから、彼女に彼を寝取られるとは思いもしなかった。

どんな気持ちで、私の惚気話を聞いていたんだろう。
二人で私を笑っていたんじゃないだろうか。

何も知らないままでよかったのに
彼と過ごす時間が減っていくにつれ、募る不安。

疑わなければよかったのに
寂しさから彼を求めて起こした行動が、自分を苦しめた。

マンションから一緒に出て来た二人は、親しげに腕を組んでいた。
彼のマンションにいるはずもない後輩。

降りしきる雨の中、後ろからそっと二人に近づき声をかけた。
一瞬驚いたような彼の表情、後輩は顔色一つ変えない。

どう言うつもり？二人の関係は？問い詰めたい言葉が吐けない。
泣き叫んで、掴みかかって、見苦しくても捨てないでと縋ればよかった。

でも言葉が出て来ない。
現実を受け入れられない。

何も言えない私に、「さよなら」と彼は告げて合鍵を渡して歩いて行った。
彼と過ごした三年の月日が、その一言だけ。

振り返ってはくれない。
雨に濡れた私を気遣ってくれないのに
後輩の彼女には雨に濡れないように傘を傾ける。

何が間違っていたんだろうか。
私はどこで間違えてしまったんだろうか。

繋ぎ止めたくて伸ばした私の手は彼に届くことなく
虚しく空を切っただけだった。