私の彼氏はヒモなんで。2【TH】 (ページ16)

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「ヤンさん、今日残業できる？」

『今日ですか？』

「お願いできないかな。外せない用事があって」

『いいですよ』

同僚のお願いに返事を返し、『少し遅くなるね』とテヒョン君にカトクを送る。送ったそうそうに「残業なの？」って返信がきた。

きっと、私の帰りを待ってスマホと睨めっこしてたんだろう。
それぐらいの返信の速さ。

カタカタとキーボードを叩く音が部署内に聞こえる。
静まった室内に息苦しさを感じるのは、私をじっと見つめる視線に気づいたから。

「相変わらず人を信じやすいな」

『仕事中ですから…』

「外せない用事が合コンだって知ってるのか？何でもかんでもいいですよって、それで痛い目に合ってるのに。ほんと懲りない女。けど、そう言うとこがお前の可愛いとこだよな…」

後ろから私を抱きしめて耳元で囁く声。
頬に唇が当たった瞬間、彼の腕を跳ね除けた。

『いい加減にしてください…！イム課長と私は上司と部下の関係です、』

「俺のことジホって呼ばないんだな…」

『どうして私に構うのよ…私じゃなくてもいいじゃない…』

「お前が俺にとって一番の女だって知ってるから。俺に尽くしてくれるとこも、体の相性も他の女と違ってAが一番感じる。Aもそうだろ？」

そうだったかもしれない。
貴方しか見えない時もあった。

好きだよと囁く甘い言葉も。
私にだけ見せてくれる笑い顔も。

全部好きだった。

貴方になら……ジホとなら明るい未来が待ってると信じていた。

『だったら…どうして私を捨てたのよ…。別れの言葉も突然で、今だって何事もなかったように私に接して…、そんな簡単に割り切れるような気持ち、私持ち合わせてないから…！都合良い女扱いしてるのどっちよ…っ……ふざけんなっ！！』

前の私なら彼にこんな態度は取れなかった。
彼が全てだったし、彼の言うことは素直に聞けた。

握りしめたスマホが震える。
画面にはテヒョン君の名前。

きっと声を聞けば泣いてしまう。
テヒョン君なら、私を優しく包んでくれるだろうから。