ふわり、桜。1 WOOZI ページ14
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「ヌナ、なんの動画見てるんですか?」
『桜の動画。風に乗って舞い上がる花びらが綺麗で』
ヌナの好きな紅茶を淹れたカップをテーブルに。
少し離れた位置からヌナのスマホを覗き見る。
『もっと近くに座ればいいのに?』
「あ…はい…」
少し距離を詰めれば、もっとおいでと俺の手をヌナが握った。
それだけで恥ずかしくて、俺の頬に熱が集まる。
ヌナはどうだろうって…そっと顔を上げて見ても。
全く変化はない。
それはきっと、俺よりもヌナの方が大人だからだ。
『ほら、見て。綺麗でしょう?』
「そう…ですね…」
見えやすいように、俺の頬に顔を寄せてくるヌナ。
一つの画面を二人でシェアする。
自然と高鳴る鼓動。
大好きなヌナの接近に、見るものは画面よりもヌナの顔。
桜色したリップに、濡れた唇。
『もしかして興味ない?』
「そんなことないです…」
あー、何してんだよ俺!
せっかくヌナと二人きりなのに、ヌナに合わせる会話もできないなんて。
ヌナに憧れてるメンバーも多いのに…。
独り占めできる時間は限られてるのに。
『ごめんね、曲作りの途中だったんだよね?私邪魔しないように、』
「邪魔なんかじゃないです!」
『え、』
「あ、すいません大きな声出して…。でも、本当に邪魔じゃないんで。ここに、いて下さい」
俺の隣にって、そう言えたらいいのに。
甘い言葉も、欲しい言葉も、歌詞に乗せてヌナに届けたい。
『そう言えばスニョン君がね、今度暇ですかって聞いて来て』
「なんで…スニョンは本名で呼ぶんですか…、」
『本人がそう呼んでって』
「だったら…」
俺も、そう呼んで。
ウジ君じゃなくて、ジフンって。
ヌナに呼ばれたい、特別扱いされたい。
『どうかした?』
「いえ、何も…」
隣に座っているヌナから、少し距離を開けて座り直した。
嫉妬してる…スニョンとヌナの近しい距離に。
俺とヌナの距離は、近づいて離れて。
違う、ヌナが縮めてくれたのに俺が自分から離した。
『ウジ君の淹れてくれた紅茶美味しい。私の好み覚えてくれてたんだね』
「なんとなくです…そうだったかなって…」
『それでも嬉しいよ』
ヌナに触れられた手を、感触を思い出して、ぎっと握る。
片想いでいいだなんて、初めから諦めるな。
自らその想いを断ち切ろうとするな。
「あ、あの…」
『どうしたの?』
「今度、俺の為に時間作って下さい…!」
咄嗟に出た言葉。
ヌナの顔を見る勇気は、俺にはなかった。
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作者名:bluemoon | 作成日時:2021年1月31日 21時