54.煉獄千寿郎 ページ9
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「姉さん…夜風が気持ちいいね…」
『うん。あ、累何か欲しい物ある?』
「欲しい物?」
被っている笠を少し上げて、考えるような仕草を見せる累。夕刻になり外に出かけることはできるようになったが、人とは見えない容姿を隠すように歩かなければならない。人の多さに慣れない様子の累は「姉さん、僕の手を離さないで」と、繋いでいる私の手を強く握った。
賑わう露天商を色々と周っては、これなんかどう?と商品を見る。
その度に「姉さんには何でも似合う」と累は微笑む。
久しぶりに累の笑った顔を見た。
那田蜘蛛山で出会った時は感情の色がなかったのに…。
「お客さん達お似合いだねぇ。恋人同士かい?」
『いえ、私と累は…、』
「A…あっちの店も見よう」
『え、累…?今、私のこと…』
名前で呼んだ?
Aって…呼んだよね?
「僕、欲しいモノ決めた。今日の姉さんとの時間僕にちょうだい。姉弟の関係じゃなくて、今この瞬間から恋人同士でいたい。だからAって呼ぶ」
もしかしてさっき言われた言葉が嬉しかったからかも知れない。本当なら血の繋がっていない私と累が、恋人同士になっていてもおかしくなかった。累が鬼になっていなければ、こんな日常もこの先の未来も変わっていたように。
「おいガキ、人にぶつかっておいてすいませんだけで済むと思ってんのかァ?」
「でも…貴方がこの方の荷物を奪おうとして、」
「あ?聞こえねぇよ!」
何処にいてもガラの悪い輩はいるものだ。倒れているお婆さんの背を優しく支えている少年は、怯えた様子でも逃げ出したりせず、果敢にも男に挑もうとしている。どこか見覚えのある風貌。髪型、髪色、太めの眉毛に、猫目がちの大きな目。
『煉獄さんだ!』
思わず出してしまった煉獄さんの名前に、反応したのは少年。
「あの、兄を知ってるんですか?」
『うん。私の兄貴係の人だから』
「どう言う意味で…、兄さんが貴女の兄貴で、でも僕の兄さんで…」
下がった眉がもっと下に下がり、私の言葉でどうやら混乱を招いてしまったようだ。何の説明もなしに兄貴係と言われても、確かに困ってしまう。
「へぇ、ガキだが着飾った身なりからして、お前は使えそうだ」
「使える…?」
『累?』
「Aに触れたら殺す。そうじゃなくても、僕の気分を逆撫でしたお前は、排除の対象だよ」
重苦しい空気。
累の放つ殺気に、男が怯んだ。
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三月の専属ストーカーなつめみく - うあああああいいるいくん救済!!救済だあああ!!やったあああああ!ここのコメント欄の空気ぶち壊していくうううう!!てか面白すぎいいいい!もうね!設定が!神なんよ! (10月24日 9時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - ありがとう〜♪続き待ってるね♪(*⁰▿⁰*) (2022年1月2日 18時) (レス) id: c4dfd681b0 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - アオイさん» アオイさんは多才な才能をお持ちなんですね。絵も描かれ、ピアノまで弾けるなんて羨ましいです。累君のテーマ曲、今度聴いてみたいと思います。更新の準備致しますね。千寿郎君と煉獄さんのお話からになりそうです。その様子に累君ヤンデレ化しないといいですけど(笑) (2022年1月2日 0時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - まぁ、私の話は置いといt((無一「更新頑張ってね」 (2021年12月31日 23時) (レス) id: c4dfd681b0 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ - 累君は、ヤンデレも似合うしツンデレでも似合うなぁ〜って思うと、私 顔が真っ赤っかになるですwww.自分で描いた累君を見ると『可愛い///付き合いたい///エンジェルですか⁉あなた⁉』ってよく言ってて 累のテーマの曲をピアノで弾くとギャン泣きにいつもなってる (2021年12月31日 23時) (レス) @page10 id: c4dfd681b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2021年9月28日 20時