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「私を待ってたって…なんで？」
「正確には先輩を待ってるテヒョン君とお話がしたくて。ほら、あそこにテヒョン君いますよね？」
イさんの指差す方向には、見慣れたテヒョン君の姿。
来客用のソファーに座っているテヒョン君は、行き交う社員の多さに落ち着かない様子で周りをキョロキョロと見回していた。この場に似つかわしくない派手なジャンパーに、ダメージジーンズ。
服装もさることながら、目立つのは遠く離れた位置からでも見える整った容貌。
「アイツ、仕事場に来るの常連になりつつあるな」
「ユンギ冷静に分析してないでさ…どう見ても私を探してるよね？」
「逆に聞くけど、お前以外に誰がいるんだよ？」
「だよね…。」
帰宅する社員に紛れてスルーする事はできないものかと本気で思ったりもした。
「あ、ヌナ！！」
テヒョン君の探知能力を舐めてはいけない。
野性的な勘は本物だ。
「へへっ、俺来ちゃった」
「来ちゃったんだ…。」
満面の笑みのテヒョン君に、私は笑えない。
「だって、ヌナに会いたかったから。ヌナは俺に会えて嬉しい？」
「違う意味で涙が出そう…。」
「俺も。ヌナが泣いたら俺も泣きたくなっちゃうから、だから泣かないで」
よしよしと私の頭を撫でてくれるテヒョン君に、イさんの冷たい目が突き刺さる。
殺気じみた目で私を見ないでよ。
これは不可抗力なのに。
「A先輩……テヒョン君のお姉さんなんですよね？」
「は？なに言って、」
「あ、あれユンギに言ってなかった？テヒョン君、テヒョンは私の弟なの。言ったはずなんだけどな…おかしいな」
「ああ…そう言うこと。そういや聞いてたかもな」
察しのいいユンギに感謝しつつ、「ヌナ…俺の後ろにいて」とテヒョン君は私をユンギから守るように自分の背に隠した。
「俺……ユンギさんのこと許してないから」
「Aに触れるのに、お前の許可がいるわけ？」
「ヌナは俺の、」
止めて、ここでヌナは俺のモノ発言はまずい！
姉と弟、その設定が崩れてしまう。
イさんの手前、テヒョン君の一言で全てが水の泡に…。
「Aはお前の何って？」
「ヌナは……ヌナは、俺の姉さんだから！！」
ロビー内にテヒョン君の声が響き渡り、見る角度によっては修羅場にも思えてしまう状況。
多分、月曜日の朝は女性社員達の質問攻めに合うことを、覚悟しなければいけないだろう。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2020年9月19日 9時
