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「テヒョン君…怒ってる？」
「怒ってる……怒ってるけど、俺ヌナとケンカしたくない…。」
膝に置いてある手にグッと力を込めて、テヒョン君は私の言葉を聞いていた。私とユンギに何があったのか、あの時テヒョン君からの携帯が鳴っていなければ…。
状況に流されて、私はユンギと関係を持っていたかもしれない。
「俺がユンギさんを傷つけたら、ヌナ悲しむよね…？どんなに腹が立っても、ヌナの悲しむ顔見たくない……だから、我慢できるよ」
「テヒョン君…。」
子供だなんて、テヒョン君を勝手に決めつけていたのは私の方。
唇を噛み締めて、震える拳を私に見せないように後ろ手に隠し、「すぐに落ちつくから」となんでもない素振りでテヒョン君は微笑む。
暴力による解決で事が済むなら気の済むまで相手を痛めつければいい。でも、それで終わりではないから。私にとってユンギは大切な同僚でもあり、友達でもあり、ずっとそういう関係でいて欲しい人。テヒョン君はそれをわかっている。
わかっているから、ユンギには手を出さない。
「ヌナ…ここボタンかけ間違えてる…。」
スッと伸びてきたテヒョン君の指が私の胸元のボタンを外し、正しい場所へと掛け直してくれる。その手つきが繊細で、壊れ物を扱うように優しくて。
「…っ……なんで…涙なんか…っ…！」
ポロポロと大粒の涙を流すテヒョン君は、「ごめん…ヌナ…。」って私に謝ってきた。
「テヒョン君は何も悪くないよ。悪いのは、テヒョン君に嘘をついた私だから…、」
「違う……俺…嫉妬でどうにかなりそうで……必死に我慢しなきゃって…っ……大人の余裕なんかなくて…。」
そう思ってる自分をヌナに知られたくないと、テヒョン君は私を思って泣いてくれる。
どこまでも純粋で、私への思いは直向きで。
「テヒョン君…泣かないで…。」
泣かしているのは自分なのに…。
その姿がいじらしい。
「ヌナが…好き…っ……好きで好きで、」
「うん…。テヒョン君の気持ち、わかってるから」
泣かないでと、流れ落ちる涙を止めたくて、テヒョン君の唇に自分のものを重ねた。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2020年9月19日 9時
