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「ヌナ…怒ってる？」
「もういいから。それよりスーツの裾口掴まないで」
「だって…手を繋いだら怒るでしょ？」
アパートの階段をテヒョン君とそんなやり取りをしながら下りていると、目の前には箒片手に仁王立ちするジンさんの姿。
朝からめんどくさいと見て見ぬ振りをしようとする私の肩を、「待ちなさい」とジンさんは掴んだ。
「僕に何か言うことないの？」
「おはようございます」
「あ、おはよう。今日も元気に出勤ご苦労様、」
「じゃあ、私急いでいるんで」
「ちょいちょい待ちなさい。僕は朝の挨拶で呼び止めたんじゃないんだよ。何か言うことない？特に後ろにいる彼！君が出てきたのAちゃんの部屋だよね？」
「そうだけど。俺、ヌナの部屋に泊まったから」
「テヒョン君…！」
思った事をすぐ口に出すテヒョン君に、「余計な事言わないの」と口止めしようとしても後の祭り。聞き逃す距離ではないから、ジンさんの耳には聞こえたはず。
日頃から私に対して異性との交際は禁止だよと、何故か管理人と住居人の立場でありながら私の私生活にまで口出してきては、あれこれと迷惑という名の押し売りをしてくるジンさんのことだ。
多分…今も…。
「泊まった…んだ。Aちゃんの部屋に…。」
「ジンさん？」
「ふーん、あっそ。君は泊まったんだ。僕は部屋に入れてくれないのに…どこの馬の骨かもわかんない彼を泊めたんだ。別に羨ましくなんか…、」
「ヌナの部屋、ヌナとおんなじ甘い香りがして。ベッドもふかふかであったかいんだ」
「君は泊まったかもしれないが、僕は別の意味で時が止まりそうになったじゃないか！なんだよ同じベッドって、僕に対する当て付け？清く正しく鍋を囲みながら愛を育んでいこうとしてる僕に、いきなり男女の関係なんて、そんなの羨ましいに決まってんだろ！！」
「ジンさん、声抑えて！今度ジンさんにも付き合いますから！それでいいですよね？」
「それならいいよ。許す」
あっさりと引き下がったジンさんに、きっとこれは私がしてやられたんだろう。勢いのまま言ってしまった事に後悔しても遅い。
「ヌナは俺の…。」と、テヒョン君はムッとして私の腕を自分の方へと引き寄せた。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2020年9月19日 9時
