送りオオカミにご用心。【TH】 (ページ13)

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時刻は18時。

いつもなら帰って来てる時間なのに、今日は30分も遅い。残業とか？いや、今日はノー残業デーのはずだ。朝出勤する時、Aちゃんは笑顔で僕に教えてくれた。

もしかして、何か事件に巻き込まれているんじゃ…。

「ジンさん、私の部屋前で何してるんですか？」

「え、まだ何もしてないよ！？するのはこれからで…熱っ！！」

背後から突然声をかけられた僕は、驚いて手に持っている鍋を落としそうになった。

「これから？」

「いや、今の言葉は忘れて。今日はAちゃんと一緒に鍋を囲いながら親睦を深めようと思ってたんだ。豆乳鍋は美白にいいって……後ろにいるイケメン誰？もちろん僕の次にだけど」

「か、会社の後輩です」

「僕の゛Aちゃんメモ゛には書かれてない人物だよ？怪しい…怪しい匂いがする」

僕の疑うような眼差しにAちゃんは視線を逸らし、部屋の鍵を開け「テヒョン君入って」と。

そっか…会社の後輩なら仕方ないか。
僕はいち管理人であって、Aちゃんとは鍋を囲むだけの仲。

「言っときますけど、ジンさんとは一度も鍋を囲んだことないんですが」

「勝手に僕の妄想に入ってこないでよ。いつも僕が夕飯一緒に食べようって言っても邪険にするくせに。この待遇の違いは何？それに、このアパート男子禁制だよ」

「でも、ここ男性の人も住んでますよね？」

「Aちゃんの部屋限定の規則だから」

「じゃあ、ジンさんも入れませんね」

「僕はいいんだ。と、言うことで君は今すぐ帰りなさい。神聖なAちゃんの部屋に入るんじゃない」

「ヤダ…ヌナのベッドで一緒に寝るんだもん…。」

ボソッと呟いた青年の言葉を僕は聞き逃さなかった。

話す言葉は幼いが、彼はれっきとした男だ。
そもそもなんの用事があってここに…。

送るなんて甘い言葉で唆し、このまま送りオオカミになるんじゃないのか！？

「Aちゃん、君の大事な貞操を守るためだ。悪いことは言わない。ここは僕の言葉に従って、今すぐに彼を帰すべきだ！」

「ジンさん大げさ。テヒョン君にお手洗い貸すだけですよ」

「そうなんだ。それじゃ心配いらない、」

僕の言葉を聞く前に閉まったドア。

渡せなかった鍋を手に自分の部屋へと戻ろうとして気づく、だとしても男を部屋に入れる事に変わりはないんじゃないかと。