大切な人。 S.COUPS ページ39
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「ただいま…。」
『スンチョルお帰り。お隣のキム夫婦、赤ちゃん出来たんだって。夫のテヒョンさん喜んでて、奥さんも幸せそうで。でね、私も…、』
「ごめん…仕事で疲れてんだよ。話は今度にしてくれるか」
『あ、うん…。先にお風呂入るよね?』
「その前に少し寝る…。」
何か言いかけたAの言葉を遮って、俺は寝室へと向かった。
結婚して三年目。
家庭生活に不満がある訳ではない。転勤の多い俺の仕事にも彼女は理解を示してくれて、慣れない土地で一生懸命家庭の事をしてくれる。そんな彼女に苦労はかけたくないと、仕事に没頭して昇進を夢見る日々。
深夜遅くに帰ってくる事もあるし。
休日は上司の機嫌取りの為に、趣味に付き合った。
家庭なんて、顧みる暇もないほどに…。
「……はぁ…起きるか…。」
時計の針は午前一時を指していた。隣で寝ているAを起こさないよう体を起こそうとして、彼女の姿がない事に気づく。
リビングから漏れ出る光。
こんな時間まで起きてるのか…。
「A、寝ないのか?」
『…っ……スンチョルっ』
「なんで泣いて…、どこか具合でも悪いのか!?病院に連れて行くからちょっと待ってろ…!」
車のキーをポケットに入れたままだと思い出した俺は、必要な財布と家の鍵を乱暴に掴みAの体を抱き上げた。
「どこが痛い?頭か?それともお腹か?」
『違う…っから…。大丈夫…、』
「大丈夫って、泣くほど痛いんだろ?」
『痛いんじゃないの……嬉し涙だから…。』
「え…、」
家を出ようとした俺の足を止めた彼女の言葉。
嬉し涙って、嬉しい時に流す涙だよな?
何が嬉しくて…?
『スンチョル…私赤ちゃんできた…。』
母子手帳を見せてくれるAの顔は涙でぐしゃぐしゃなのに、そんな彼女が愛おしい。こんなに可愛いんだって事、久しく忘れてた。
俺はAを見ようとしてなかった。
Aの話を聞こうともしてなかった。
『何か言ってくれないの?』
「ああ、その……言葉が出てこなくて…。俺…Aを幸せにするんだって、仕事ばっかで…。それなのに、赤ちゃんできたって聞いて…嬉しいのに…。」
『スンチョルが私の為に頑張ってる事知ってるから。私、スンチョルの奥さんになれて幸せだよ。スンチョルとの子供を授かって幸せ』
Aは幸せって言ってくれたけど、俺の方がAと一緒になれて幸せだよ。
大好きで大切な俺の妻。
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作者名:bluemoon | 作成日時:2020年4月25日 22時