おねだり。 MINGYU ページ16
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「先輩、資料庫に荷物持って行くの手伝ってもらえますか？」
『いいけど…。』
会議が始まり、上司達は皆出払っていた。社内に残るのは、俺と一年先輩のAさんだけ。電話係も兼ねてる先輩は、席を外す事に得意先から電話がかかってこないか心配そうな表情で、早く行こうと俺を急かす。
急かす理由は…他にもあるけど。
先輩にとって俺と二人きりと言うのが余り乗り気ではない様子。
それもそのはず…。
『ミンギュ…やっぱりまずいよ』
「少し位大丈夫だって。ここなら声も聞こえないし、誰かに見られる心配もない」
『けど…、』
「もういいから、こっちに来て」
消極的な彼女に対し、俺は欲求が強いみたいで。僅かな時間でも、大好きな彼女に触れたい。家ではどうかと聞かれると、それはそれで触れてはいるんだけど…。
使われていない机に抱き上げたAを座らせると、ちょうどいい位置に顔がきて少し屈んでキスをした。グロスの付いた唇の濡れた感触。ペロッと舐めると甘い味がして。
『ミンギュ…早く戻らないと、』
「一回だけじゃ物足りない。まだ大丈夫だって。だから口開けて」
『でも…、』
「俺とのキス好きでしょ？それに、首筋に歯形付けられるのも好き。俺に抱き締められのも、行為の最中に言葉攻めされるのも。優しいより、乱暴なくらいがちょうどいいって」
『…っ、そんなことない！カラかうの止めなさい』
「こんな時は、先輩面しなくてもいいじゃん。恋人同士なんだから。Aのイイとこ、何でも知ってる」
低い声で囁けば、Aの体がビクッと反応した。真っ赤な顔をして、俺の肩口に顔を埋めるのは、おねだりしてる証拠。
こうなるとAは自ら俺に体を預け、素直になってくれる。さっき俺が言ったように、口を開けてキスを待つ。赤い舌先が口内から見え、誘われるように唇を重ねた。
『…んんっ……ミン…ギュ…。』
可愛い声で俺の名前を呼ぶから、軽くするつもりがどんどん気持ちが高ぶって、自制しなきゃいけないのに机にAの体を押し倒してしまう。
本当にマズイとは思う。
こんなこと職場内で見つかったら大事になりかねない。
ネクタイに手をかけた時、静かな資料庫に響く終業を知らせるチャイム。
『も、戻らないとっ！』
冷静さを取り戻したAは俺の体を押し退けようともがく。
その手を掴んで、「続きは…今夜な」と言う俺に、Aは乱れた髪を整えながら頷き部屋を出て行った。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2020年4月25日 22時
