月の悪夢 (ページ10)

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ヌナは麻薬ページ10

＿＿＿ SG side

ピンと張り詰める空気に背筋が震える。

結局先に口を開いたのは僕の方だった。

SG「………………ハンソラは嘘言ったことない、から。嘘じゃない」

そう小さく呟くと彼は優しく微笑んで、僕の頭を撫でた。

VN「チャナが先に会ってるから''俺らも早く行こう''」

Aヌナが起きたことを確かめるかのように、さっきから何回も呟いているその言葉。

それによって、僕の中で蠢いてた(うごめいてた)疑心暗鬼という感情はいつの間にか侵されてしまい、

もうヌナが起きたという''現実''しか頭にはなかった。

＿＿＿＿

再び車内に静寂が訪れた時、スマホの通知音が鳴る。

すぐさま表情を変えて、カカオをタップするボノナ。

きっとチャニからであろう文面を読むにつれ、ボノナの綺麗な唇の端ががつり上がっていった。

そんな恍惚とした表情に少し怖さを感じる。

でも、確かにAヌナの存在はそれぐらい大きい。

麻薬みたいに不確かで脆くて、人を正常じゃなくさせる。
　

そして段々、''弟''だと我慢できなくなる。

欲。

中毒。

依存、

とまではいかなくても好意以上の感情であることに間違いはない。

きっとボノナもそうなんだろう。

でも怖いとしたら、それは僕も同じだ。

だって愛おしい以上に狂おしいくらい、

俺はAを愛しているのだから。

＿＿＿＿＿

DN「ヌナ。今２人がこっちに向かってるって」

すやすやと眠るヌナをゆっくり覗き込み声をかける。

かつてのヌナはよくうなされ、寝つきも悪かった。

寝たとしても苦しそうに顔を歪ませていることが多く、いつも夢現で泣いていた。

でも夢を見始めてから、

ヌナはいつも幸せそうに微笑み、小さな寝息を立てた。

色んな感情が渦巻く。

僕たちが寄り添っても辛そうだったヌナにはどうにかして楽になって欲しかったけど、

それがこんな形になるなんて。

今だってそう。

もう目覚めたはずなのに、その微笑みを浮かべた寝顔につい臆病な僕は怖くなる。

また夢を見始めてしまうのではないか、と