月の悪夢 (ページ5)

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ヌナの瞳はガラス玉ページ5

ハユンヌナはよくも悪くも鈍感な人だと思う。

年上だけど結構抜けてて、笑いを取ることも上手で話し方もゆったりしていて、

会社の上の人たちの皮肉にも真正直に反応して空気を凍らせる。

メンバーの空気が最悪でもいつも通りハユンヌナはニコニコしてて

嫌なくらいヌナにソックリな人。

だから、関わりはじめてすぐに苦手意識を持った。

初対面でもビクビクすることなく僕たちに話しかけてくる。

嫌悪。

今の感情にピッタリな言葉だ。

ヌナに似てるけどヌナじゃない人が、

ヌナのいるべき場所に居座っていることを認めたくないし、許したくない。

でもヌナがいない生活は時間が経てば経つほど苦しくなるだけで、

ついに''限界がきた''僕たちはハユンヌナを受け入れてしまった。

＿＿＿＿＿＿＿

僕らの人気が安定してきて、会社も大分大きくなってきたある日。

Aヌナの養父でもある代表がヌナを新社屋のＶＩＰルームに移した。

遠くにある病院に多忙でなかなか行けない僕たちを気遣ってなのか、はたまた別の思惑があるのかは分からない。

でもそのおかげで僕たちはツアーやペンミの時以外、すぐ会いに行けるようになった。

それから嬉しいことがあったとき、辛いことがあったときメンバー全員こぞってヌナのもとに行って語りかけた。

ヌナは相変わらず微笑んで眠っているだけなんだけど…ね。

＿＿＿＿＿

僕の大好きな眩しい笑顔。

悪戯っ子みたいに忙しなく動いていた色素の薄い瞳。

風に靡くたび、透き通って輝く茶髪。

時間が経てば経つほどヌナの全部が恋しい。

毎日花を飾りに行ってヌナの部屋を華やかにしていった。

花が大好きなヌナが起きた時、少しでも喜んでくれるように。

＿＿＿

いつも通り重たい扉を開ければベッドに横たわるヌナがいるはず。

でも肝心なベッドは空っぽで、

床に''女性''がうずくまっていた。

DN「………………………ヌ……ナ…？」

僕の掠れた声に、彼女はゆっくりと振り向いた。

薄茶色のガラス玉みたいな瞳は紛れもなくヌナのもので、

僕が５年間ずっと…ずっと見たかった瞳だった。

嗚呼

やっと僕の気持ちが届いたみたいだね。

おはよう

ヌナ