月の悪夢 (ページ11)

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ヌナと僕たちの空白ページ11

SG「ボノナ先入って」

SG「スングァナこそ」

部屋の前でお互いを突(つつ)き合う僕たち。

さっきマネヒョンに練習室に行くと言ったあとヌナのいるVIPルームに来たのだ。

でもいざ入ろうとすると足がすくむ。

チャナは勝手に入ってと言ったけど、ヌナに会って拒否されたら

そう考えると体が固まってしまう。

５年間。

僕たちとヌナはそんな長い時間の空白ができた。

一体、何を話せばいいんだろう、

なんで僕たちの前から消えたのか？

なんで？

頭では理解していてもいざヌナを目の前にしたら一方通行な思いばかりが募って、爆発しそうな事に僕は怯えている。

一番辛いのはAヌナなのに、結局ヌナを苦しめるような質問を僕は咄嗟に言ってしまうかもしれない。

もしそうなるならいっそ会わなければ…

そんな考えがじわじわと苦く心に広がる。

手も震え、いつの間にか背筋にツウッと汗が流れた。

VN「…スングァナ、怖いのは僕も一緒だよ」

SG「！」

ボノナのゴツゴツした手が僕の手を優しく包んだ。

VN「つい自分の心が先走って、ヌナを傷付ける事を言ってしまうかもしれない。それでも僕たちはヌナに何があったかを伝えなきゃ」

ボノナの瞳がゆらゆらと悲しげに揺れる。

そうだ、悲しいのは僕だけじゃない。

ボノナだってヌナにどう向き合えばいいのか戸惑っている。

だからきっと大丈夫。

気持ちを上手く伝えられなければ、ゆっくり時間をかければいい。

つい先走りそうになったらヌナの瞳を見つめて落ち着けばいい。

たとえヌナに嫌われたとしても、

僕はあの事を話さない限り一生後ろめたい気持ちで生きるだろう。

SG「…ボノナ」

VN「うん」

茶色の重たい扉の先にはどんなヌナが待っているのか、

膨らむ気持ちを密かに抱え、ゆっくり開けた。

SG「…っ」

ボノナと同時に息を呑むのが分かる。

そんな僕らの先には上半身を起こして、本を読むヌナがいた。

SG「ヌ…ナ」

掠れた小さい声に、伏せられていた長い睫毛と色素の薄い瞳がこっちを向く。

嗚呼、綺麗だ