月の悪夢 (ページ1)

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目が覚めてページ1

長い長い夢を見た。

あり得なくて、笑ってしまうくらいおかしな夢を。

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頬に風が当たったのを感じてうっすらと意識が覚める。

ゆっくりと瞼を開いてみれば、視界に入ってくるなんとも悪趣味な天使たち。

しばらく天使と睨めっこをし、頭がだんだんハッキリしてくるとどこからか電子音が聞こえる。

そして視線を下に這わせた私は、信じられない光景に絶句した。

水色の病衣を着た自分、左腕に繋がれている点滴、身体にはあちこちパッチを貼り付けられ、心電図モニターからはピッピッという電子音。

理解した瞬間、キャパを超え頭が破裂しそうになる。

特に何ともなかった昨日。

デビュー前のティーザーをやっと撮ることができ、有頂天だった私は深夜一人残ってデビュー曲の練習をしていた。

なんでこんな場所にいるの？

何一つわからない今の状況に気持ち悪さを覚え、吐き気がする。

周りを見渡すとＶＩＰルームのような部屋だった。

勿論、一介の練習生である私にそんな待遇はあり得ない。

なぜ？

何があったの？

疑問だけがグルグルと頭を巡り、ショートする。

やがて考えることを放棄した私は夢中でパッチを剥ぎ取り、そのままベッドから出ようとした。

その瞬間。

私は倒れるように座り込んでしまった。

自分でもわかる筋力のなさ。

なんで、、？なんで？

昨日はあんなに力強く踊れてたのに

今は立つことすらできなければ、力を入れることすらできない。

ただただ混乱して私はいつの間にか泣いていた。

パタパタと病衣を濡らす涙はやがて肌にまで染み込みはじめる。

その生暖かい感触が、改めて現実だと教えてくる。

それでもどうしようもない私はヤケクソに泣くことしかできなかった。

ガチャリ

？「………………………ヌ……ナ…？」

扉を開けた彼と視線が混じり合う。

そしてスローモーションみたいにゆっくりと彼の手から立派な花瓶が落ちていった。

ガシャーーーン

涙の止まらない私と、食い入るように私を呆然と見つめる彼。

「あなたは誰なの？」

震える唇からそんな言葉が勝手に出た。