届く想い uｰknow ページ21
それなのに初主演舞台はアンチからの嫌がらせで俺はこんな風に舞台に立つゆいを思って悔しかった。
舞台の最終日
俺はその公演を見に行った。
本当はすぐにでも見に行ってやりたかったが
情けないことに俺は見に行く勇気がなかった。
アンチで溢れ返る舞台に立つゆいを
見続ける自信がなかった。
深呼吸をして舞台会場に入る。
手には汗がにじんでいた。
ゆいよりも緊張しているのではないだろうか。
時間になり会場が暗転する。
ゆいの出番がくるまで
俺の心臓は早くなっていく。
どうかこのまま静かに終わって欲しい…。
ついにゆいの出番になったとき
会場の所々から激しいバッシングの声が
上がった。
俺は「止めろ！！」と言いたい気持ちを
ぐっと堪える。
これ以上ゆいの舞台を汚したくない。
俺は手の平に血が滲むくらいギュッと
強く拳を握り締め続けた。
けれど目の前ではそんな声も気に留めずに
演技を続けるゆいの姿がある。
ただひたすらに作品の素晴らしさを
伝えたいというゆいの真っ直ぐな気持ちが
俺の気持ちを静めていく。
舞台が進むにつれゆいへバッシングを
上げていた者は口を閉ざし演技に
引き込まれていく。
そして最後。
舞台が終わり幕が閉じたときには
会場からバッシングどころか
拍手喝采の音が響いた時
俺の瞳からは押さえきれない思いが
止めどなく溢れていた。
よくやった。
よくやったよ、ゆい。
お前の想いはちゃんと届いてるよ。
おかげで俺には「泣き虫アッパ」という
あだ名がついてしまった。
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作者名：飛べない鳥 | 作成日時：2016年2月24日 0時
