【UnderTale】無気力な二人が織り成す物語 3

彼岸 ページ10

Aside

どうして。
どうして、ここにSansがいるの。

「……Sans」

街道に向かう最中に人の声を聞き、
目的とは違う道を歩いていた。
すると、湖を囲う森の奥から
たった一人で誰かが歩いてきた。

…まさかSansだったなんて。

ほんの一瞬、驚いた様子を見せると
Sansは暫く黙りこんだ。

「A？」

名前をよばれた直後、大声を上げて
叫びたい衝動に駆られた。
でも、耐えた。
そんな事をしたところで、
何も解決しないと分かっていたから。

「…気のせい、か。」

寂しそうに呟いてSansが背を向ける。
その足は重い物を引きずるように
ゆっくりと動かしている。

「…待って。」

Sansは振り向かない。

「…お願い。」

ここにいるのに、気づいてくれない。

「行かないで。」

どんどん、距離が、離れてく。

「…独りに、しないで……」

感情が無いのがこんなに
苦しいものだと思っていなかった。
悲しいとも寂しいとも思わないのに
Sansをここに引き留めたい。
思うだけ思って、それだけだ。

ただ、知ってほしい。
私はここにいるんだよって。
ただ、知ってほしい。
私は皆に会いたいんだって。

見えているのに、触れない。
見えているのに、話せない。

遠ざかっていく背中。
きっともう、会えないんだろうな。
何でSoulLessなんかになったんだ。
怒りが湧いてきそうだったけど、
感情がないからそれすらない。

…最悪な気分。

言葉にするならそんな感じだと思った。

ねぇ…Sans？
どうして苦しそうだったの？
分からない…分からないよ。
私、可笑しくなったみたい。

だから、もう。
私の事…忘れて？

どこか苦し気な雰囲気を漂わせる
大好きだった、彼に向けて。
届くはずのない願いをこめた。

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