いつかの夏の日 ページ23
.
エントランスを出て
マンションの前で立ち竦む。
後ろに気配を感じて
『…この前みたいに夜中に一人で
出歩いたりしません』
振り向かずに、すんって鼻をすすって
そう言うと、ぽんって頭に手が
乗せられた。
「おん…ええ子」
月が綺麗な夜だった。
ふわりと生ぬるい風が夏の匂いを運んで
顔にかかった自分の長い髪からは
甘いシャンプーの香り。
わたしが気の済むまで先輩はずっと
隣にいてくれて、二人で無言のまま
夏の深い藍色の夜空を見上げた。
部屋に戻ってからも眠れなくて
くかーって上を向いて寝てる
りゅうちゃんの横顔を見つめる。
雰囲気は高校の時よりも大人びたけど
くしゃって笑ったら幼く見えるのは
ずっと変わらない。
大好きだったなぁ
でも今は違う"すき"に変わって
もっと大好きな人がいる。
不思議な感覚だった。
.
(Aちゃん、どこ行くん)
(りゅうちゃん！お墓参り。お兄ちゃんの)
(そういえば言ってたなぁ………
俺も行ったらあかん？)
(えっ…全然いいけど、なんで？)
(この前Aちゃんの話聞いてさ
お兄さんに会ってみたいなぁって。)
(嬉しい。お兄ちゃんも喜ぶと思う！)
いつかの、夏の日の夢をみた。
(お兄さん初めまして。えっと、妹さんと仲良くさせてもらってる丸山隆平っていいます。
Aさんとは同じ大学なんで
これから4年間、彼女を見守ります。)
(ふふっお兄ちゃん代わりだもんね？)
(おん、任せとけ！)
墓前でりゅうちゃんが言ってくれた言葉
一生忘れないだろうな。
今年も、お兄ちゃんに話すことが
たくさんあるよ。
.
夜が空けると
結構早くにみんな起きだして
それぞれ家に帰って行った。
「Aちゃん、また写真送ってな！」
帰り際にりゅうちゃんが携帯を
見せながら言う。
『うん、LINEに貼るね！』
パタンと扉が閉まるとみんながいなくなって
ガランとした部屋をぺたぺた歩いて
フローリングに仰向けに寝転がった。
…普通に話せた。
ふぅ、って小さく息を吐く。
『…なーんにもしたくないなぁ』
「今日バイト入れてんの？」
ゴミ出しから帰ってきた先輩が
ペットボトルの水を飲みながら
上から覗き込む。
『二日酔いを想定して入れてません(笑)』
「俺も(笑)今日はダラダラしよ〜」
先輩も隣に寝そべると、
冷たくて気持ち〜って頬っぺたを
ぺちょって床にくっ付けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1397人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひまわり(プロフ) - さらんさん» ホーム画面に！？申し訳ないくらい嬉しいです！！！(笑)わざわざコメントありがとうございます〜！ハッピーエンド大好きなので、二人はどんな試練も乗り越えてくれるはずです♪安心してお楽しみ下さい(o^^o) (2015年10月3日 17時) (
レス) id: 0e83d11206 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 彰§さん» むっちゃ嬉しいコメントありがとうございます！純愛編でも、この場面が好き！って言ってもらえるようなキュンキュンをお届けできるように頑張りますねー！(o^^o) (2015年10月3日 17時) (レス) id: 0e83d11206 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - ほたちろさん» わたし自身、両想いの先書いてよおおぉ！って思っちゃうタイプなんですよ(笑)ありがとうございます照れます(￣▽￣)うまく書けるか分かりませんが、甘々な二人をお楽しみ下さい♪ (2015年10月3日 17時) (レス) id: 0e83d11206 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 椿 めいさん» わざわざコメントありがとうございます！楽しみのひとつにしていただけて嬉しいです〜(o^^o)少しずつの更新になりますが、これからも頑張りますね♪ (2015年10月3日 17時) (レス) id: 0e83d11206 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 山田まゆさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると更新頑張ろうって思えます(o^^o)純愛編もよろしくお願いしますね♪ (2015年10月3日 17時) (レス) id: 0e83d11206 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひまわり
| 作成日時：2015年9月10日 23時
