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直己「どいてッッ!!」




ELLYが走る足を緩めるのとほぼ同時に飛び込んできた光景に、私は言葉を失った。




「れ、お……?」

玲於「ゲホッ……ゲホッゴホッ」

「玲於ッ!!」

直己「Aっ、揺らしちゃダメだ!」




直己さんに抱えられ、人だかりを割るように海の方から連れてこられ

青と黄色のレジャーシートに降ろされた玲於。



頭の上からつま先までビッショリと濡れて、胸をグッと抑え 苦しそうな咳をしている。




隆二「っ、救急車!」

直己「もう呼んでる、隆二 回復体位にするから手伝え。


あと臣、海水を出来るだけ沢山汲んできて!直人さん、竜宮城から氷と綺麗なタオルを」

「「??」」

直己「左足が腫れてる。多分クラゲだな…その痛みで溺れたんだ。この腫れ方見るに毒かもしれない……早くっ!」


広臣「…ごめん、バケツ借りるね」




シートに膝をついて震えるだけの私のすぐ脇を、野次馬から借りたバケツを持って広臣くんが走っていった。

真っ赤に腫れ上がった玲於のふくらはぎに乾いた浜の砂をかけて、その熱さに玲於の身体が跳ねたが、暴れないように上半身を隆二が抑えつけていた。




隆二「……」

「隆二っ、どうしよう 玲於が…」

隆二「落ち着いて」

「私が目離したからこんな…、」

隆二「A、



──大丈夫だから。

見ろ、玲於 ちゃんと息してる」




隆二が私の手首を掴んで、玲於の胸に当てた。
むせ返るような咳は止まらない、だけどもちゃんと その胸はまだ鼓動を刻んでいた。




隆二「助けてやるから。お前が弱っちゃだめだよ、ねーちゃん」

「……う、ん」




そう言う隆二の顔に、いつもの笑顔はなかった。
並びの良い白い歯を私に見せることなく でも、励ます声色は抜かりなく優しくて。




「……」

隆二「……」




ずっとずっと、救急隊が到着するまでの間ずっと。

一度も離すことなく掴まれた手首からは、安心する熱さが伝わっていた。



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作者名:とまと野郎 | 作成日時:2015年7月26日 21時

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