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ヘンな夢を見た。
店じまいをした後の 照明の付いていない竜宮城に、白いワンピースを着た私が裸足で立っている。
後ろに気配を感じて振り返ると、
花束を持った隆二がいて。
“ ──── ”
彼はいつもの笑顔で何かを言い、彩りに満ちた花束を差し出してくる。
私はそれを見て とても幸せな気持ちになって、両手を前に差し出した。
突然場面が変わる。
今度は学校の教室。
朝早く一人きりの教室から、ラクロス部の朝練に励む岩田の影を目で追っていた。
“ 好きなの? ”
視界は岩田の影に支配されて、
だけど耳元は、隆二の声だけが聞こえる。
“ 好きじゃないよ。”
窓の手すりを掴みながら、自然と口をついた言葉に
ひどく胸が痛んだ。
“ ……違うよ。”
“ どっち? ”
“ 本当は、好きだよ ”
“ ……誰を? ”
横を向けば、黒板の前に 悲しげな顔をした隆二が立っている。
“ ──── ”
そのとき自分が何を言ったのか、思い出せない。
彼が手に持つ花束は、灰色をしていた。
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ELLY “雨風ヤバくて、もう帰れないっすよ”
隆二 “俺もこん中帰るのやだな〜 泊まってっていい?”
広臣 “俺の部屋は無理な。勝手に民宿使って”
隆二 “ええ〜っ”
トイレに目を覚まし一階に降りた時、食卓の方からそんな会話が聞こえた。
夢と現実の狭間にいるような、しっかり立てないフラフラの足取り。
そっと立ち止まって廊下の窓のカーテンを捲ったら、外が見えなくなるほど雨水が打ち付けられていて。
“いきなり速度上げたものねぇ…でも夜のうちに来てくれそうで良かったわぁ”
続くおばさんの言葉に、
寝ぼけた頭でもやっと、“大型台風”が近づいているのだと理解した。
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作者名:とまと野郎 | 作成日時:2015年7月26日 21時