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気が付いた時には、静まり返った薄暗い空間にいて。


頭の下にアイスノン 左腕に点滴。
枕元に吐物用のトレーが置かれ そのすぐ傍にナースコールが転がっている。




「………」




脇の下に挟まれた体温計は39℃を示していた。






直己「点滴終わったら帰っていいって」

「はい。」

直己「典型的な熱中症。いつから具合悪かった?」


「んー……いつからと言われると…」

直己「……まさか体調不良に気付いてなかったのか?」

「そう、ですね」

直己「はあ…」




硬いベッドから、額に手を当てる直己さんを見上げた。

今朝起きた時より視界がハッキリしている。




「また、ご迷惑をおかけしました」

直己「一週間も経たずに姉弟揃ってね」




まあ仕事だから。と彼は言う。

管をつながれた左腕からヒンヤリと冷たさが伝わり、ボーッとした頭をまた少し 鮮明にした。




直己「帰りは直人さんが迎えに来てくれるって」

「はい……」

直己「明日店休めそう?」

「今日の営業見る限りでは」

直己「……台風か。どっちにしろ休業かもな」




直己さんはそう一人で納得すると、“竜宮城に連絡するから”と ベッドを囲うカーテンの外へ出て行ってしまった。













『…──Aッ、』




誰が、呼んだのだろう。

熱い砂の上に横たえる寸前、最後に聞こえたのは自分の名前。




「……、」




視界の右端に入る台の上に、買った覚えのない飲みかけのペットボトルが置いてあった。







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作者名:とまと野郎 | 作成日時:2015年7月26日 21時

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