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広臣「おかえり」

「はーい、ただいま」




帰りを出迎えた広臣くんは、意外にもニヤニヤする事なく 私の左手の拳を見ていた。

まさかと思うがこいつ、私と美女の秘密のやり取りをどこかで盗み見していたのか。



昨日彼を 愛の伝道師 などと言ってもて囃したが、こんな奴愛の伝道師でも何でもない。

ただのむっつりスケベだ。




直人「どうだった?!何があった??」

「美女の谷間に手を突っ込みました」

「「「ガチッ?!」」」




直人さん健二郎さん隆二が口を揃える。

んなわけないだろう。



呆れてため息を一つ。
未だ大人しい広臣くんの脇を通り過ぎて




「………」

隆二「???」




カウンターの前に立ち、ジッと見つめれば傾く首。

私はそんな彼に、出来るだけ明るい声を意識した。





「はいこれ。」


隆二「……なに?」

「パーカーちゃんに渡された。ほら、左の子」




隆二が選んだ方の、可愛い子だよ。




隆二「ふーん」




片手で受け取った二つ折りの紙を、そのまま人差し指でパカッと開けて中の文字を確認する。




直人「隆二が良いって言ってた方じゃん!」

健二郎「アカンやん、LINEやん、どうするん?!」




騒がしく覗き込む外野に、

隆二はお得意の笑みを浮かべて私を見た。






隆二「ハハッ、ありがとう」



「いーえ。」




ちょっとだけ、彼の性格を期待していた私がバカみたいだ。
興味なく紙を丸めてくれりゃあ少しは気がすむのに、そんな満面の笑みでお礼まで言われたら……





健二郎「連絡すんのか?!」

隆二「ねー、可愛かったもんね〜」

直人「うっっわ、ヤラシイ顔してんなぁ」




そりゃ 浴衣のときだけ “可愛い” 女より、普段から普通に可愛い女の方がテンション上がるよね。


気持ちわかる、私も相当の面喰いだもん。

だけどムカつく。














「むっつりスケベ、浮気症はどっちかね?」

広臣「むっつりスケベって誰のことだよ」

「ん」

広臣「俺かよ。……指差すなって」




夏は人を可笑しくするって言ったのお前じゃん。と広臣くんは続けたが、


隆二が可笑しいのを、夏の暑さのせいにするのは余りにも強引すぎる気がしたのだ。



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作者名:とまと野郎 | 作成日時:2015年7月26日 21時

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