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屋台の方へ一歩踏み出した私を引き止めるように




「キミ、ひとり?」

「……」

「良かったら一緒に花火見ない?」




声をかけられ

パッと振り返った先に、明るい茶髪。




「……岩田?」




自然と口をついた名前。

しかしその人は、キョトンとした顔でクスクスと笑い始めた。




「え、岩田? 誰それ笑」

「 (あ、全然違う…)


ごめんなさい、知人に似てて……」


「そうなんだー、別にいいよ。1人で花火見るの?」




カタリ、足が自然と後ろへ一歩。
男の肩越しに見える提灯通りが霞んで見える。




「あ、の 私、連れがいるので……」

「嘘でしょ笑 さっきから見てたけど、もう随分1人じゃん」




竜宮城の男達より少しだけ高い身長。
グレーの浴衣は確かによく似合っていたが、厳粛な日本男児とは程遠い雰囲気を醸し出していて。




「どうせ誘われるの待ってたんでしょ?」




仏さまの見ている寺の境内で、ナンパ待ちする程馬鹿じゃありませんよ 私。


心でそう思ううちに、男はグッと距離を詰めて 手首を掴まれる。
やめてっ と息を吐いた私を見下ろし、怪しく口角を上げた。




「ちょっと……っ!」

「こっちこっち」




強引に暗がりへと連れ込もうとする男の手を、必死に振り払おうとするが 全然離れない。



やばい、こうゆう時 どうすれば良いんだっけ……




















隆二「 ねえ、触らないで 」






「……あ?」


隆二「可愛いのはわかるけど、触らないで」



「てめえなんだ」



隆二「……早く放せよ、殺すぞ。」




殺すぞ。って、そんな笑顔で言う台詞でしたっけ。

あと、あなたとてもグッドタイミングですけど、また後ろからコッソリ見ていたんですか?




「あ゛?!今何つった!?」

隆二「3回言ったからね。…お前バカ」




隆二の長い足がシュルリと地面を滑って、男の足元を掬った。


突然転がされた男の手が私から離れて 代わりに隆二がパシッとそれを握ってきて




隆二「走って、」

「えっ」




楽しそうに囁いて、グイッと繋がれた手を引く。


後ろで男が何か叫んでいたけど 前を走る隆二が、それを耳に入れることさえ許してくれなかった。




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作者名:とまと野郎 | 作成日時:2015年7月26日 21時

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