♪16♪ ページ17
ガラガラッ バタン
私は、いつものように練習室に向かった。
カチ カチ カチ カチ
部屋には、メトロノームのが刻む、規則正しい音しかしていない。
錦「遅い」
貴「すみません」
錦「じゃあ、♩=60を12拍ー4拍、半音ずつ」
貴「はい」
今では、この言い方も慣れた。
四分音符をメトロノームの60の速さで、12拍ロングトーン、4拍休み。それを半音ずつ上がっていく。
時計の秒針が♩=60の速さと同じだから、12秒伸ばして、4秒休み。それをド・ド♯・レと
順番に吹いていく。
錦「そこ、12拍伸びてない。もう1回。」
貴「はい」
錦「今の音、音程悪すぎ。最初から。」
貴「はい」
やばい、私、今日ダメかもしれない……
錦「はぁ、何で昨日出来とったとこが今日できへんの??
お前、やる気あるん?
そんなんやったら、辞めてまえや!」
貴「……………」
“辞めてまえや!”
先輩のその一言で
私の心の中にしまってあった思いが
動き出した。
貴「そうですよね。
私、辞めた方がいいですよね?
ホルンに決まった時に、辞めてれば良かったんです。
私、これでも頑張ったんですよ?
何とか、先輩達みたいになれるようにって。
私、もう無理なんです。
これ以上
頑張れない………
先輩、短い間でしたが、お世話になりました」
錦「おいっ、ちょっ、待てって!」
ガラッ
裕「ごめんね、遅くなっちゃった。」
貴「裕子先輩
今まで、ありがとうございました。」
私は、全速力でその場を後にした。
裕「Aちゃん⁈
錦戸くん、どうしたの?」
錦「俺が、ちょっとキツく言ってしまって。
“辞めてまえや”って……
そしたら、ホンマに辞めるって……」
裕「わかった。
私行ってくるから、待ってて。
先生には、ホルンパート合奏遅れるって言っといて!」
錦「……はい。」
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作者名:ちか | 作成日時:2014年9月7日 14時