犠牲なくして ページ44
このところ、少しだけ調子が良くなった。
やはり期間が伸びたこともあるのだろう。
代償になった後の肉体の破片は、
博士が素材として妙にうきうきとしながら
どこかへと、全て持ち去ってしまった。
人間の腕や足なんかをどう使う気でいるのか
私には分からないし、到底想像する気もない。
もしかしたら人間標本も作るのかもしれない。
だって嬉しそうに笑っていた博士は、
元の世界に戻るまでの期間を伸ばす代わりに
私の殆どの部位を何度も解体したのだから。
よく人格が壊れてないなと思う。
それは多分切除された痛みで
気が飛んでしまったからなのだろう。
意識がないうちに何度も切除されているのだ。
断片的にしか覚えていないし、
切除し失った筈の部位は
再生しているのだから実感がない。
冷たい鉄板に横になって、天井を見る。
そこには暗い色のパイプがひしめき合っていて
まるで臓器のようだと思えてしまった。
…胸の部分に不快な物が込み上げる。
ああ、こんな事を考えてしまうから。
そもそもこんな不気味な場所にいるから。
あの感覚と痛みを呼び覚ましてしまうんだ。
ミチミチという音が限界まで行き着くと
やがて骨と肉が力に耐えきれずへし折れ、
その奥に隠されていた腱や筋や管が
こぞって対外へとまろび出る─。
あのなんとも言えぬ、気持ちの悪い感覚を。
不意に扉が開く音が聞こえた。
首だけをもたげた方向から
Charaの震えた声が反響した。
その声に大丈夫、と返事を返しながら
腕と足に装着された拘束具を外してもらう。
ああ、私は酷く暴れたんだな。
拘束具で擦り切れた皮膚から血が流れていた。
少し経った頃見返せば消えていたけれども。
念の為にと擦り傷があった所を
消毒してくれていたCharaが声を上げた。
「明日、するんだよね。」
何が、とは聞く気にならない。
私の時間が短くなっている今、聞く事もない。
つん、と強い匂いの消毒液が皮膚に垂れた。
「そうだね。明日、抜き取るよ。」
明日、私達はAsrielの核を得る。
溶けた肉体に融合したSoulを、
私の失意で引き剥がすのだ。
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クロセ(プロフ) - はじめまして！続きを楽しみにしてます！ (2020年6月2日 23時) (
レス) id: c80b4d78c0 (このIDを非表示/違反報告)
きりにゃー - ロイヤルガードさん、タイミングう！ (2020年3月4日 1時) (レス) id: 9df501902d (このIDを非表示/違反報告)
イザヨイ - 名前カタカナになってますが十六夜です！(汗) (2020年2月4日 17時) (レス) id: 447a13bfc7 (このIDを非表示/違反報告)
イザヨイ - いえいえ！大丈夫ですよ！仕事が忙しくこちらも返信できずすいません！時間があるたびに見に来ます！！((ｵｲ (2020年2月4日 17時) (レス) id: 447a13bfc7 (このIDを非表示/違反報告)
零ノ花(プロフ) - 十六夜さん» 返信遅くなってしまいすみません。今時期は様々な用事がありロクに更新出来ずにいます。途中で作品を放るつもりは更々ありませんのでお時間が空いている時にでもまたいらしてください。 (2020年1月8日 18時) (レス) id: fd8ff30996 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零ノ花 | 作成日時：2019年7月15日 14時
