地下世界の彷徨者 3

残された時間と課題点 ページ29

「Sion君。頼まれていたモノだよ。」

淡々とした声を発し、博士がそれを私に手渡す。
それは私がこの世界に来てから頼んだ
Asriel王子の残骸─Monsterの塵だ。

「…これで器って作れます？」

掌の上で転がる小瓶を傾けると
さらさらと塵が形状を崩す。

「うーん…どうかなぁ。
腐敗した遺体でも出来たのだし、
器は作れると思うけれど…
一度やってみない事には分からないねえ。」

考えあぐねるように視線を
宙に投げていた博士だったが
最後にはそれを私へ向けた。

「─それよりも、だ。
Sion君。Soulの代用品は？」

「本人からの了承は得ています。
ですが、彼女からSoulを分離させるに当たり
私のSoul特性を物質化させる事が
現在、第一の課題となっております。」

「Sion君のSoul特性は【失意】だったね。」

決意と相反する特性──【失意】。

この特性であれば【決意】と結合した肉体を
分離する事が出来ると思い立ったのは、
私がこちらの世界に来て間もない頃だった。

物質化した【決意】を注入し、
崩れ落ちたMonster達はAmalgamと化した。
ならば、相反する性質である【失意】を
物質化して注入した場合…
【決意】を打ち消し、Soulと肉体の結合を
解除出来るのではないか？

実証実験は出来ていないが、恐らく可能な筈だ。
私の能力でFriskの能力を打ち消しているのだから。
物質化する事さえ出来れば、
後は同じ手順で彼女に【失意】を注入すれば良い。

「…そうとなれば暫くの課題は【失意】の物質化だね。
仕事時間は全てそちらに切り替えよう。
君の残された時間は少ない(・・・・・・・・・・)ようだからね。」

突かれたくなかった所を突かれ、
身体が固く強ばるのを感じた。
一体いつ、気付かれたのだろうか。
私の、残り時間が僅かだという事に。

「…博士が協力して下さるのであれば
【失意】の物質化など容易い事でしょう。
そんなに心配しないで下さい。
計画は、私がいる間に必ず成功させます。」



─それが私の役目なのだから。

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