回心転意 ページ28
「…何でアンタが泣いてんのさ。」
泣きたいのはこっちなのに、と言いかけ
喧嘩をした時とあまりにも変化したSansの表情を見、
その言葉は溢すことが無かった。
「─Sion、軟禁されてたんだってねえ?」
Sansから聞いたよ、と涼しげな顔でCharaは言う。
それを知って何になるんだ、と
疑問の視線を投げかけるれば
閉ざされていた瞼から赤い瞳がチラリと覗いた。
その瞳が捉えたのは、
Charaの背後で俯いていた骨。
そんなSansにCharaが何かを耳打ちをすると
ほんの一瞬だけ、顔を歪めたSansが
おずおずとこちらへ近付いてきた。
「Charaから聞いたんだ…お前さんの事情。
悪かったな。傷付けるつもりは無かったんだが
結果的に、お前さんを傷付ける事になっちまって。」
申し訳なさそうに眉を顰める彼の姿に
喧嘩をしていた時のような嫌悪感は抱かない。
「いや…私も態度悪かったし。
その…ごめん。あれは言い過ぎだった。」
何とも言えない空気に包まれたこの場所を
がらりと変えたのはCharaとFriskの拍手だった。
「─よく出来ました!」
にっこりと満足げに微笑むCharaとFrisk。
仲直りをしたことについて、褒めているのだろうか。
和んだ空気に安堵したのか
Sansの目元から涙が溢れだす。
怖がらせてごめんな、と繰り返すSansは
流れ落ちるそれらを強引に腕で擦った。
「…そんなに泣かないでよ。
今回は私が引き起こした事なんだ。
アンタのせいじゃない。謝らないで。」
Sansは何も悪くない、と
落ち着かせる為に彼の頭をそっと撫でる。
思えば私の方が彼よりも
長い年月を過ごしているではないか。
この程度の事であんなにも喚くなんて
……情けないにも程がある。
落ち着いて動きさえすれば
こんな事にはならなかった筈だ。
脳内で反省が目まぐるしく回る中、
何かを思い付いたのか、ぱちんと両手を合わせ
音を響かせたFriskによって思考が止まる。
「よっし!今日は僕がパイを作ってあげるよ!」
「…お茶会するなら紅茶もいるよね。」
「じゃ、Charaに頼もうぜ。
Charaが淹れるのが一番上手いんだしな。」
「そう褒めてくれるなら嬉しいよ。
今日は良い物を使おうかなぁ。」
先程とは一変、和んだ空気に口元が緩む。
引き締まり結ばれていた唇から緊張がほどけ、
そこから艶やかな笑い声が解き放たれた。
「─帰ろう、僕らがいるべき場所へ。」
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クロセ(プロフ) - はじめまして!続きを楽しみにしてます! (2020年6月2日 23時) (レス) id: c80b4d78c0 (このIDを非表示/違反報告)
きりにゃー - ロイヤルガードさん、タイミングう! (2020年3月4日 1時) (レス) id: 9df501902d (このIDを非表示/違反報告)
イザヨイ - 名前カタカナになってますが十六夜です!(汗) (2020年2月4日 17時) (レス) id: 447a13bfc7 (このIDを非表示/違反報告)
イザヨイ - いえいえ!大丈夫ですよ!仕事が忙しくこちらも返信できずすいません!時間があるたびに見に来ます!!((オイ (2020年2月4日 17時) (レス) id: 447a13bfc7 (このIDを非表示/違反報告)
零ノ花(プロフ) - 十六夜さん» 返信遅くなってしまいすみません。今時期は様々な用事がありロクに更新出来ずにいます。途中で作品を放るつもりは更々ありませんのでお時間が空いている時にでもまたいらしてください。 (2020年1月8日 18時) (レス) id: fd8ff30996 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零ノ花 | 作成日時:2019年7月15日 14時