君にこの歌を (ページ46)

今日:16 hit、昨日:7 hit、合計:48,646 hit

アイドルとファンページ46

手を引っ張られ引きずられるようにして席に座る。

そこは俺が座っていた席より奥。

カウンター席の1番端だった。

宮本：どうぞ。飲んでください。

そう言って宮本さんは冷たい口調でカクテルを差し出した。

宮本：ここなら防犯カメラには映りません。それに私だって言いつけもしません。言いつけても私にメリットはありませんから。未成年飲酒をしたっていう罪を被ったまま瑞稀くんがアイドルをできるのならですけどね。

淡々と言っている彼女の目は潤んでいて思わず

井上：ごめんなさい。

と謝った。

井上：俺、アイドル辞めたいんです。このカクテルを飲んだらアイドル辞められるかなって…これ以上苦しい思い、したくなくて…

アイドルとファンここの距離は遠すぎても近すぎてもいけない。

ましてやアイドル側からこんな話をするのは非常識にも程があるだろう。

それでも聞かなくては自分が壊れそうで

井上：宮本さんは俺にカクテルを飲んで欲しくないですか？

と聞いてしまった。

宮本：、、、へ？でも私はHiHiのファンなので瑞稀くんがやりたいように…

井上：俺の気持ちを尊重するんじゃなくて。宮本さんの気持ちが知りたいんです！っ、ごめんなさい…急に…泣。

ついに言葉を発している俺の目から涙が溢れて止まらなくなった

その時…

宮本：飲んで欲しくないです。

そう言って宮本さんは口に出した。

宮本：私はHiHi Jetsが大好きです。一時期最悪、信じたくないって思ったこともあるけど涼くんが無実だって知ったら尚更応援したい。伝説になって欲しい。って思ったんです。だから瑞稀くんがこのカクテルを飲んでそのせいでHiHiがなくなったら悔しいです。

そう言って宮本さんは俺の目を見据えた。

宮本：でも、アイドルのファンって皆さんが思っているよりアイドルの幸せを願っているんです。瑞稀くんが辛い思いをするならアイドルなんて辞めたっていい！瑞稀くんの幸せが1番なんです。

だから、最後は瑞稀くんが決めてください。

力強く言われたその言葉は俺の意思を固めた。

井上：宮本さん。俺はもう一度、自分に出来ることを探します。

宮本：え？

井上：だから、カクテルは飲めません。

そう言って笑うと宮本さんは嬉しそうに

宮本：今度は有名になって来てくださいね。

と言った。

井上：はい。Aありがとう…

そう言って俺はたった1人の信じるべきファンに背中を向けてバーの扉を閉めた。